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ワールドゲームズについてのご報告

SBDコラムをご覧の皆様、こんにちは。
男子66kg級の佐竹優典です。

今回は、先日行われたワールドゲームズについてのご報告と今後の展望について書かせて頂きます。
是非最後までお読み頂けますと幸いです。

ワールドゲームズとは

まず、ワールドゲームズについての説明をさせて頂きます。
ワールドゲームズとは、オリンピックに採用されていない競技種目の国際総合競技大会です。国際ワールドゲームズ協会(IWGA:International World Games Association)主催、国際オリンピック委員会(IOC)後援のもと4年に一度、夏季オリンピック・パラリンピック競技大会の翌年に開催されます。

パワーリフティングも競技として採用されており、ワールドゲームズでは通常の世界選手権とは異なり2階級合わせて合計12人が選考されるシステムで、前年の世界選手権の1〜3位は自動的に選考、残りの6枠を世界選手権のIPFポイント順、各大陸(アジア、ヨーロッパなど)の大会での優秀選手、開催国枠などで選考されていきます。

そのため順位は通常の大会のように重量ではなく、IPFポイントによって決定されてるため、体重を減らしてポイントを稼ぐのか、また下の階級の選手は減量をせずに出場し記録向上を目指すのか等、より高度な戦略も求められるようになります。

大会結果

次は、大会結果についてです。
自分が出場した階級はMens Light Weight Classになります。
※ワールドゲームズではノーギア(Classic)のカテゴリーではなく、フルギア(Euipped)のカテゴリーになります。

スクワット
①300kg成功 ②310kg失敗 ③310kg成功
ベンチプレス
①205kg失敗 ②205kg成功 ③210kg成功
デッドリフト
①250kg成功 ②260kg成功 ③265kg成功
トータル 785kg(日本記録)
IPFポイント 105.49

結果は…優勝することができました!!

この場をお借りして応援、サポートいただいた皆様に御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!

高校生のときにワールドゲームズ出場を夢見て、キャリアを重ねて行くうちに夢は目標に変わって、そして今回それを叶えることができました。
ワールドゲームズ優勝が、ずっと夢であり目標だったので、本当に未だに信じられないというのが素直な気持ちです。


写真:ワールドゲームズの金メダル。大きいです。

試合の振り返り

前回のコラムでも書かせて頂きましたが、事前の予想通りHsieh選手とHassan選手との接戦になりました。

自分含め3選手とも実力は拮抗しており、一本でも落とすと順位が切り替わる、一瞬たりとも気の抜けない試合となりました。

スコアシート(Goodlift)


まずスクワットでは、Hsieh選手が270kg、Hassan選手が285kg、自分は300kgからスタート。

両選手ともデッドリフトを得意とする選手なので、自分はサブトータルでいかに差をつけるかが大きなポイントになってきます。

両選手とも第一試技を成功させ、自分の番に。練習では何度も成功していた300kgで判定は成功だったものの、緊張や当日のコンディション面からか、立ち上がった後のトップで若干バランスを前に崩してしまいました。

続いて第二試技。ここでHsieh選手が280kg、Hassan選手が292.5kg、自分は310kgを選択。
しかし第2試技は3選手とも失敗するという展開になりました。
自分は先程の試技でバランスを崩した際にカーフを消耗してしまい、310kgのバックステップが上手く決まりませんでした。
一度後ろにバランスを崩しましたがラックに戻し再度挑戦。しかし深さが足りず失敗となります。310kgを受け損ねるのは完全に想定外でしたが、同重量で第三試技を申請します。

第三試技では全員同重量を選択しましたが、Hsieh選手、Hassan選手ともに失敗。
ここで自分が第三試技を取り切れるかが勝負の分かれ目になると思い、より一層集中して試技に臨みました。
慎重にバックステップを決め、思い切ってしゃがみ白三本で成功。
この時ほとんどカーフには力が入ってなく、執念で立ち上がりました。
振り返ってみると、本当にここが勝負を決めたポイントだったと思います。

次はベンチプレス。ワールドゲームズは裏のグループが無いため、20分のインターバルで次の種目に入ります。
しかし、スクワットの第三試技で力を使い果たしてしまい呼吸は戻らず、脚に力も入らない状況でした。
なんとかアップを進めるものの、感覚が普段と全然違います。
予定していた回数のアップも時間が足りなくできず、若干の不安を残したまま第一試技が始まりました。

Hassan選手はベンチプレスを苦手としており、165kgからスタート。
ここは堅く成功させ、自分の番に。
しかし自分の第一試技の205kgは、ベンチシャツと動きが噛み合わず失敗となります。今のが最終アップということにして、同重量の205kgを選択。
フルギアだとこういったケースはよくあることなのですが、ここで焦らないことが重要です。
Hsieh選手も第一試技の210kgを失敗し、第二試技に入ります。

第二試技ではHassan選手は170kgを選択。しかし失敗となります。
自分はこの頃にやっと呼吸も整い、同重量の205kgをなんとか成功。
しかしアップ不足とスクワットのダメージで思うようにフォームが取れません。(もともとブリッジは低いのですが。笑)
少しでも重量を積むために5kgアップの210kgを第三試技で選択しました。
Hsieh選手も210kgを成功し、第三試技に入ります。

第三試技ではHassan選手は同重量の170kgを選択。しかしこちらも失敗となりました。今日はどうやら調子が悪そうです。
続いて自分は210kgを成功。ここでベンチシャツもフィットしてきて、この日1番いい動きで成功できました。昨年の世界選手権よりも重量は落としてしまいましたが、今回は記録よりも勝ちにいく試合。記録は次の試合で更新できるように頑張ります。
Hsieh選手も215kgを成功し、最終種目のデッドリフトに移ります。

そしてデッドリフト。
昨年ノルウェーでの世界選手権以降、特に注力して取り組んできた種目です。
グリップアウトの理由を研究し、ケアやフォーム作りに取り組んできました。
自分は第一試技の250kgを軽く成功させ、第二試技は260kgを申請。
Hsieh選手は280kg、Hassan選手は300kgを成功させ第二試技に移ります。

自分は第二試技の260kgを軽く決めて成功。
そしてHsieh選手の第二試技。290kgを軽く上げましたが、トップでバランスを崩しそうな動きをセコンドの阿久津さん、福島さんと私は見逃しませんでした。おそらく+5kgほどでミスが出ると予想し、自分も5kgアップの265kgを申請。Hassan選手は312.5kgを成功、しかし優勝には330kgほど必要な展開に。世界記録を大幅に上回る重量となるため、Hassan選手は3位を確定させるための315kgを選択。
これでHsieh選手と自分の一騎打ちが確定します。

そして運命の第3試技。我々日本チームが選択した重量は265kgでした。まずこちらが引かなければ優勝は無いという展開で、最終練習ではこの辺りの重量からグリップが怪しかったことと、Hsieh選手のミスの確率を鑑みた結果の重量選択でした。
気負わず無心でバーベルに向かい、バーを引き上げます。
結果としては265kgも軽く引き切り、ここで暫定1位に浮上します。
そしてHsieh選手の295kg。これを引けば逆転優勝という場面で、かなりきついギアに着替えて登場してきました。
この日に至るまでやれるだけのことはやったし、これで負けたらもう仕方ない…と祈る思いで見つめる中、バーベルは凄まじいスピードで浮き…トップでバランスを崩して失敗に。
ここで私の優勝が確定しました。
直後に、今までの緊張からの解放と優勝の嬉しさから、涙が溢れて止まりませんでした。

会場にいた多くの方々に祝福して頂き、SNS等でも日本の皆様からもたくさんのメッセージを頂き、ようやく優勝したという実感が湧いてきました。

この日のことは一生忘れることのない、自分にとって本当に大切な一日になりました。

最後に

ワールドゲームズで過去に優勝した日本人は因幡英昭さん、伊差川浩之さん、三土手大介さん、そして同日に優勝された福島友佳子さん、そして自分で5人目となります。
偉大なレジェンドである先輩方の中に加わることができて、畏れ多いながらも本当に感無量の思いです。

今後はワールドゲームズチャンピオンの名に恥じない選手、人間であれるようにより一層競技に真摯に向き合い精進していきたいと思います。

まずは次戦は11月にデンマークで行われるフルギアの世界選手権を予定しています。

こちらも優勝できるように頑張っていきますので、引き続き応援宜しくお願い致します!

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

文:佐竹優典

■ベスト記録(ノーギア66kg級)
スクワット235kg
ベンチプレス 152.5kg
デッドリフト 252.5kg
トータル 635㎏
■ベスト記録(フルギア66kg級)
スクワット310.5kg(日本記録)
ベンチプレス 222kg(世界記録、日本記録)
デッドリフト 270kg
トータル 785㎏(日本記録)
■競技実績
2014年
世界サブジュニアパワーリフティング選手権大会 59kg級 優勝
2018年
世界ジュニアパワーリフティング選手権大会 59kg級 優勝
世界男子パワーリフティング選手権大会 59kg級 3位
アジアクラシックパワーリフティング選手権大会 59kg級 優勝
2019年
世界ジュニアパワーリフティング選手権大会 66kg級 2位
2021年
世界男子パワーリフティング選手権大会 66kg級 4位
(スクワット、ベンチプレス種目別1位)
2022年
ワールドゲームズ
Mens Light Weight Class 優勝

全日本パワーリフティング選手権大会
優勝6回(59kg級3回、66kg級3回)
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会 優勝1回
59kg級&66kg級 フルギア日本記録保持
Twitter:@stk_59_66
Instagram:@yusukesatake66

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