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対談~アスリートに対するBIG3指導②~ ベンチプレッサー兼S&Cコーチ柴田昌奈さん

コラムをご覧いただきありがとうございます。
コラムニスト福島未里です。
今回のコラムは2回にわたって対談形式でお送りしている内容の第2回。
非常に盛り上がり、長くなった結果、2回に分けてお送りしています。

ぜひ①からお読みください。
対談~アスリートに対するBIG3指導①~ ベンチプレッサー兼S&Cコーチ柴田昌奈さん

対談者紹介
名前:柴田 昌奈(シバタ アキナ)
【所属GYM】
ゴールドジム溝の口神奈川
鎌倉パワー湘南BP
【競技成績】
2021年度神奈川県ベンチ初出場(女子69kg級 優勝)
2022年度ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 69㎏級 一般3位 M1優勝
2023年度アジアクラシックベンチプレス選手権大会 69㎏級 M1優勝
2023年度ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 69㎏級 M1優勝
2024年度全日本ベンチプレス選手権大会クラシック部門69㎏級 一般&M1優勝

対談はZoomで行いました

6.ご自身は今どんなトレーニングをしていますか

柴田:今暇人なっていて。(笑)やっぱベンチ好きだから。はい。
私は結構時間があれば本当に朝1時間でも30分でも、朝一ゴールドジム行ってとかで。うん、結構。
週5ぐらいエブリベンチしていたんですけどやめました。

福島:なぜですか?

柴田:私たちって表現悪いですけど、季節労働者みたいじゃないですか。
海外遠征行っちゃったら全く練習できないので、帰ってきたらエブリベンチのようにやっていたんです。

で、同じチームに47キロ級の小林ナオコさんがいらっしゃるんですけど、「この前遠征行っていて、ベンチやるの2週間ぶりなんですよ」って言っていたら、「いや、前回のフォームより今回の方がいいよ、間が空いた方が体がリフレッシュしていていい感じがするから、エブリベンチやめたら」って言われたんですよ。

でも、不安だなと思って。
そうしたら「3種やっている人なんて、ベンチって週に1回か2回しか回ってこないんだよ」っていわれて、確かにそうだなって。
だから、他の日に選手に教える種目をやるとか基本的な補助種目にして、今はやっても週2とかになりました。

あとは、未里さんにこの前パーソナル受けてレップやるのと、試合形式でやるのってやっぱり違うなと感じて高レップもやめました。
あれからやっても3~5回とか。
重いので低レップでとにかくベンチは技術練習。
で、ベンチを上げるために補助種目でガンガン筋トレするって感じ。

福島:エブリベンチやめて感覚変わりました?

柴田:いいですね。ただ、エブリベンチする人はする人ですごいですよ。
やっぱりそれだけケアやコンディショニングもしてかなきゃいけないし、プログラムの組み方もすごく緻密になってくると思うんで。

別にエブリベンチを否定するわけではないし、合う人は合うと思うんですけど、私には合わなかった。
だだそれを自分では気づけない。
やった方がいいと思っていたけど、ナオコさんが今の方がいいよとか言ってくれたり、福島さんからレップじゃなくて、こうした方が私はいいんですよねって言ってくれたり。
確かにと思って。

福島:ありがとうございます。いろんな意見を取り入れるのも大切ですよね。

柴田:やっぱ同性だから同性の気持ちってわかるじゃないですか。
もちろんその、男性に教わることがダメとかじゃなくて。
それは選手にも通じるとこかなと。
同性だから気持ちがわかる、同性だからわかる体の使い方とかトレーニングの仕方ってのはあるのかなと思います。

福島:なるほど。私も聞いていて非常に共感できる部分が多いです。
柴田さんは割とトレーニング頻度多めのイメージもがあるんですけど、1日何時間やりますか。

柴田:ベンチやる日は1時間半ぐらいですかね。
50分ぐらいベンチして30分くらい補助種目。
ベンチやらない日はもう1時間ぐらいに最近なりました。
補助種目の追い込みが甘かったので。

未里さんとやったダンベルベンチからいい刺激もらって。
選手も重量ガンガン上げてくるじゃないですか、やっぱり選手が重さに対してメンタルブロックないのに私がビビってたらダメだなと。

福島:いろんな組み方ありますけど、1回オールアウトまでやり込んだ経験とか潰れる経験をした人間しかわからないことってあるじゃないですか。

柴田:怖さとかね。

福島:そうなんですよね。なんかやっぱそこがベースを上げる部分。
最近はやっぱこう、RPEトレーニングとか、追い込まないトレーニングみたいなところも言われてはいますけど、 結局その経験を1度しないと伸びしろがなくなる感じはありますよね。

柴田:本当にそう思います。
結局こういう仕事しているから、色々知識とか理論とかあるんですけど、色々やってきた結果、今はこのやり方がいいなって思っています。
このやり方にしたら食べないと回復しないからご飯も食べるし、体でかくなるし。
1周回ってこれって感じです。

福島:いきなりそればっかりでもなく、色々考えて色々やった上でそれがいいってなっているんですよね。

柴田:だからやっぱ柔道選手強いんだなって。
重さガンガンあげるし、減量がなければめっちゃ食べるし。
人として強い人といると、強くなんなきゃってなりますね。

福島:間違いないですね。
日本女性の中の生き物としての頂点にいるような、 女の子たちが集まっているわけですから。

柴田:下手したら世界の中でもそうかも。

福島:だから自分にもいい刺激にもなるし。
東京から離れて、そういう女の子たちを見なくなってから、やっぱこう、欲しますよね。そういうのを、いい意味でちょっと変わった人に会いたくなります。(笑)

柴田:決してバレー選手のトレーニングがダメだよって言っているわけでは全くなくて、そこまで必要ないんですよ。
ある程度のBIG3は必要だけれども、彼女たちは飛んだりしなきゃいけないし、コンタクトがないから。
彼女たちには彼女たちのやり方があるわけだって。

余談なんですけど、柔道ってある程度のそのトレーニング年数を重ねていくと、選手の得意が突出して、この選手やばいな、みたいのが出てくると思っていて。
でもバレーってBIG3強い子って大体全部強いんですよ。

フィジカルが強いって言うんですか。
この人もうテストしたら全部トップ3に入るよねみたいな。
突出してなくて、トータルでフィジカルが強い、運動神経がいいっていうのが大体バレーの中ではいるんですけど、柔道ってベンチもデッドもスクワットもめっちゃ強いよねっていう人っていますか?

福島:そういわれてみればほぼいないですね。
普通の人から見たら全部強いと言えば強いんですけど。
ベンチプレス全然できないけど懸垂無限にやれるじゃん!みたいな選手多いです(笑)

柴田:それこそバレーボールってバランス型だと思うんですよ。
だけど柔道って力に特化している部分もあるから、多分フィジカルテストをさせたとしても、競技特性って出るんだろうな。

福島:柔道って面白いのは、人によって組み方違うから力を発揮する部分が違うじゃないですか。
だから人それぞれ強いところがあって。
当たり前といえば当たり前ではあるんですけど、 やっぱりそういうところも考えてトレーニングプログラムとかを組むのは、ある意味こっちのスキルでもあり、面白さでもある部分だなっていうのは思いました。

柴田:バレーよりシンプルですね。
育成年代だったらそういうわけにはいかないですけど、上のカテゴリーではこの子これ強い、じゃあこれでガンガン行っちゃおうぜ。みたいな感じですね。

7.選手をサポートするうえで大事にしていることはありますか

柴田:自分が競技始めてやっぱ考え方とかもすごく変わったから、とにかく自分を鍛え続けて、自分が試合にも出て挑戦しているっていうことは大事にしたいですね。

福島:じゃあ、今後もベンチの試合には出続ける。

柴田:もう出てくしかないですね、この仕事やっている以上は。
あとは、男子選手はわかんないですけど、柔道にしてもバレーにしても、これ共通しているのが、 選手って指導者のこと結構見ているんで、自分が一生懸命ベンチやっていると、選手にとってそれもプラスに働いていると思います。

仕事も自分の競技も同じ体重階級制っていうことをやっていると、増量の大変さは共感できます。
自分はすぐ体重落ちちゃうんで減量の苦しみはちょっとわかんないけど。(笑)

体重の変動とかもなんか話題にもできて何より選手と共感しやすくなる。
自分磨きですね。
自分はやっぱ鍛えとかなきゃいけない。

あとは、セットごととかレップごとに指導していますね。
いいところを見つけてあげる、プラスの側面は伝えてあげる。

媚を売るとか、選手に好かれたいとかそういうことじゃなくて、純粋に素直に思って、「今のセットの6レップ中の3レップはいいイメージでできていたよね」とか、「しっかりレンジ取れていたよね」、「しゃがめてたよね」って。

じゃあ次のセット、6レップ中4レップできたらもう最高だねみたいな感じで言えば、やっぱ選手も頑張ってくれる。
プラスの側面は伝えて次に繋げてあげるように、できるだけいいことは言うようにってことだけは意識しています。

8.柔道選手のサポートから離れて

柴田:福島さんは今フェンシング選手サポートしているじゃないですか。
フェンシングなんてマジの技術種目でそれこそ柔道と真逆で、どちらかというとバレー寄りだと思うんですけど、どんなこと実施しているんですか。

福島:BIG3です。(笑)いやもうやっぱこれが逆に強みだと思っているので。

柴田:いや、突出していますよ。(笑)

福島:ウェイトリフティング、BIG3、ベーシックな種目、まずはここ。
で、私がサポートしてきた選手ってトレーニングをやり込んだことがない選手が多くて、それだけでもフィジカルが伸びてすごく成長するんですよ。

今見ている選手も筋量が増えてフィジカル的に成長したから、競技パフォーマンスも良くなったんですよね。
今はもう筋肉量も1~2キロ伸びて、体重も元々52~53kgとかだったんですけど、ベースで55kgぐらいになりました。

フェンシングは力負けの概念がないから、筋肉量は維持でいいかなっていう段階になってきているので、次はもうちょっと爆発的な部分を伸ばしたりとか、動きを重視したり、違うフェーズに移行する時期かなと思います。

あとはフェンシングの競技特性に沿ったトレーニングとか、指導のスキル面でも自分の中でもうちょっと勉強して選手に提供できるようになりたいなっていうのは自分の課題としてはあるんですが、絶対的なベーシックはやっぱり必要だなっていうのを改めて感じましたね。

柴田:今、爆発的なって言いましたけど、そこウェイトリフティングあるからめっちゃ強みじゃないですか。

福島:そうですね。
そのウェイトリフティングやったきっかけも、 自分が指導できないのがすごく嫌だったからなんです。
結局、自分がトレーニング好きだからハマったんですけど、 そこができるっていうのは強みかもしれないですね。

柴田:尊敬します。私、多分そこ苦手なのでVBTに頼るんですよ。

福島:私もちょっとVBT手出し始めましたよ。ちょっと1回やってみないと、と思っているんで。
まだ全然活用できてないんですけど。

フェンシングってエペ・サーブル・フルーレ、って種目があるんです。
その中でサーブル選手を今みていて。
サーブルって他の種目に比べて一瞬で決まることが多くて、これがフルーレやエペだったら自分の強みを発揮できなかったんじゃないかなってちょっと思ってます。

柴田:でもそしたらサーキットトレーニングという選択肢もありますよ。
(※柔道競技では心肺機能向上を目的の中心に置いた様々なパフォーマンスアップのためのサーキットトレーニングを実施している)

福島:柔道仕込みのサーキットもやります。
でもね、他の競技サポートしてみてびっくりしました。
柔道選手ってすごかったんだなって。

柴田:柔道選手がすごいのが、サーキット終わって今日心拍数あがり悪かったねって言った時に、「ロープの負荷が足りない」って言われて… 嘘でしょって。
「太いロープが良かった」って。

福島:競技によって能力が変わってくるのが本当に面白いです。
最近は引き出しを増やすのに最近必死なので、昌奈さん色々教えてください。

サーキット後に疲労困憊のフェンシング選手

9.トレーニング頻度

柴田:私、シングルベンチリフターなのでパワーリフティング競技3種目の人マジで尊敬していて。
どういう配分で1週間トレーニングしていますか。

福島:基本的にはスクワットデッド週1、 ベンチ週3ですかね。
多い時はスクワット週2 で、デッドはもうやらない時もあります。
その、試合前間近だけとか。
最近は強度を調整して週2やるときも多いですが。

柴田:疲れが残るからですか。

福島:そうです。
疲れが残るっていうのも、次の日に響くっていうのもそうですし、シンプルにスクワット結構やり込んでいるとデッドが伸びたので、 そこは本当フォームをちょっと研究したいっていう時以外は割とスクワットベンチを重視して、最後の最後にちょっと調整みたいなことも多いですね。

柴田:じゃあ強みのベンチを中心に。

福島:そうです。
結局やっぱ私の強みはスクワットそこそこベンチプレスで稼ぐみたいなところだったりするので。

柴田:それこそ柔道家です。

福島:確かに(笑)
その強みは大事にしたいな、と思っての配分なのかもしれないですね。

柴田:補助種目はメインが終わったらちょっとやる感じ。

福島:ほぼメインしかやらないことが多いですね。
ダンベルベンチをベンチに飽きたらやることは結構あったかもしれないです。
意外と補助種目少なめだと思います。シンプルにベンチプレスばっかり。

でも復帰にあたってトレーニングをやり始めたら、今までは間が空いてもフォーム練習してちょっと重さ持っていけば、そこそこまで戻ってきてきたのが、もうこれ以上はボリュームやらないとダメだなっていう感覚が出てきました。
なので最近は意識して補助種目をやるようにしていますね。

柴田:いや、3種やっている人はすごい。
私はもうベンチ3試技やっただけで疲れたと思うのに。

福島:私はなんか逆にベンチプレスだけやっていた時代が思い出せないんですよ。
何しよう?ってなっちゃう。
最近もベンチプレッサーの選手のプログラムを作ったんですけど、考えれば考えるほどこんな頻度でやったら胸めっちゃ疲れちゃうよな…って(笑)

柴田:1回のトレーニングの長さってどれぐらいですか。

福島:今は長いときは2時間ですかね。でもおしゃべりも多いんですけど。
でもやっぱ子供ができて時間を取るのが難しくなったんで、最近は昼間子供が寝ている時にスクワットだけやって、ダブルスプリットみたいな形で夜分けて残りの種目やるみたいなのが増えましたね。
保育園に週2~3日行くようにもなったから少し余裕はできました。

柴田:いやすごいですよ。試合出るんだから、

福島:とりあえず出ることが大事かなと思った試合は出ます。

柴田:本当ですよね。
私、試合すごく緊張するんで、そこは選手から学ばなきゃいけないなと思っています。

10.トレーニング指導をする女性に向けて

福島:パワーリフティングをやる女性S&Cコーチに向けて何か一言…と思ったんですけどほぼいないですかね。
S&Cコーチは限定されすぎるので、トレーニング指導を生業とする女性に向けて何か一言。

柴田:トレーニングしましょう。それしかないですね。
トレーニングを選手に教えるには、やっぱり自分を鍛えることで説得力がでる。

サポート対象がアスリートであれば大事なのは好かれることではなく、結果出すことなので。
重さを持つことをできる・できないじゃなくて、まずは自分の心に挑戦してやっていきましょう!
すみません、えらそうで…。

福島:いえ、共感できる部分も勉強になった部分も非常にたくさんあった時間でした。
ありがとうございました。


◆コラム執筆者

福島未里(ふくしまみさと)
静岡県富士市FTGYM所属
FTGYM(https://ft-gym.com/)

ベスト記録
パワーリフティング(ノーギア)
SQ145kg
BP113kg(一般女子57kg級日本記録)
DL165kg
TL423kg(一般女子57kg級日本記録)

2013年度
アジアベンチプレス選手権大会(フルギア) ジュニア57㎏級1位
2014年度
世界ベンチプレス選手権大会ジュニア57㎏級(フルギア)2位
2017年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57㎏級1位
2018年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級1位
2019年度
世界ベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級 5位
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会 一般女子57kg級1位
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子63kg級1位
2021年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級2位
2022年度
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会一般女子57kg級1位

保有資格
日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー
NSCA公認CSCS
健康運動指導士
柔道整復師

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