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パワーリフターによる出産レポート

福島未里です。
前回のコラムでは妊婦スポーツの安全基準について書かせていただきました。
妊娠中に書き始めていたものなので、実際の出産についてあまり触れていませんでした。

今回は私自身の出産レポートのコラムです。
出産に向けて実際にやっててよかったなと思ったことを紹介しながら、トレーニー目線のレポートをお届けします。
あくまでも個人の体験・感想だということをご承知おきください。

1.予定日2週間前から入院日決定まで
2.陣痛から実際に入院するまで
3.病院到着後から子宮口が開くまで
4.夫のセコンド
5.いざ出産
6.その後
7.出産の感想
8.最後に

1.予定日2週間前から入院日決定まで
予定日は1月12日。
12月14日の妊婦健診では推定体重2500gを超え、もういつ産まれても大丈夫と主治医に言っていただきました。
ひとまず、元気にそこまで育ってくれたことにひと安心。

年を越す前の12月28日に年内最後の妊婦健診を受け、「年末年始に産まれる可能性はありますか?」と聞いたところ、子宮口はほとんど変化がないからその可能性は低いとのこと。
次の健診時に子宮口が開いていたら入院して出産する予定を決めることに。
まだお腹にいてほしいというボーダーラインを超えたので、トレーニングを不安なく行えるようになりました。
トレーニングは出ているお腹に干渉しない種目で普段の重量の50〜60%程度で、BIG3やマシントレーニング等で気持ちよく体を動かしていました。

年を越して最初の妊婦健診が1月6日。
この時点での子宮口も前回の検診時から変化なし。
入院日を決めるのは次回の検診に持ち越しになりました。

5日後の1月11日に再度健診へ。
予定日の前日になっても子宮口はあまり変化がありません。
最終的に14日に入院し、陣痛促進剤を使い15日に出産することになりました。

2. 陣痛から実際に入院するまで
入院予定日前日の13日、いつものように軽くトレーニングを実施。
翌日14日15時にいよいよ入院ということで最後の記念撮影をしてもらい、ジムを閉めました。
準備するものを確認していざ就寝しようというところで、お腹に痛みが出始めました。

前駆陣痛(本陣痛の前に起こる陣痛)かな?と思い、寝ようとしましたが、だんだんと痛みが強くなり寝ようにも寝付けず。
痛みの間隔も短くなっていきました。
深夜3時頃、陣痛の間隔が10分〜15分になってきたところで病院へ電話をして指示を仰ぐことに。

無痛分娩は出産時間も長くなる傾向があるということで、もう少し家で待機し、陣痛の間隔が10分を切ったらまた連絡くださいとのことでした。
そこから約3時間ただひたすら、陣痛タイマーアプリ(陣痛の間隔を記録してくれる)片手に呼吸に集中しながら耐え、7分〜10分間隔になった朝6時に再度電話。
入院の指示があり、夫の車に乗り病院へ向かいました。
朝日が降り注ぐ中、富士山が綺麗に見えるな…なんて思いながら、焦りながら運転する夫を横目に見ていました。

産院に向かう車の中からの写真

3.病院到着後から子宮口が開くまで
病院へは7時に到着しました。
分娩着に着替え、分娩室で子宮口を確認してもらうと4cm。
子宮口が開いていない場合は陣痛室である程度開くまで過ごすようでしたが、無痛分娩の麻酔を入れるための処置もあるため、そのまま分娩室で出産まで待つことになりました。

だんだん痛みが強くなって来ましたが、子宮口が開いてこないと麻酔も入れてもらえません。
力を入れることは得意でしたが、出産直前までは力を入れないことが必要になってきます。
出産の際は骨盤底筋のリラックスができていないとスムーズな出産ができません。
今まではトレーニング中に腹圧が下から逃げないように骨盤底筋を閉めてきたのに、出産では緩めることが求められます。
出産に向けて、骨盤の動きに合わせて骨盤底筋の収縮と弛緩をさせるトレーニングは行ってきたので、夫に手を握ってもらいながら陣痛に合わせて深呼吸&弛緩を繰り返し続けました。

その日は日曜日だったため、麻酔ができる先生は不在。
先生が病院に到着するまでに時間がかかるとのことで、お願いだから早く来てくれ…と祈りながら先生を待ちました。

先生が到着したのが9時。
「予定より1日早く来ちゃったね〜」と和やかにお話ししながら、麻酔を入れる管を通してもらいました。
助産師さんと先生が引き継ぎをしているのをカーテン越しに聞いていましたが、「教えていなくてもソフロロジー法ができていてます」とおっしゃってくれていたので、やっていたことは間違いではなかったなとひと安心。

産院によって色々なやり方はあると思いますが、母親学級で腹式呼吸でリラックスするやり方としてソフロロジー法というものを習っていました。
骨盤底筋を緩める呼吸がこれと同じだったようでした。
漫画やドラマなどでは「ヒッヒッフー」というラマーズ法の呼吸をよく見かけますが、近年ではソフロロジー法が主流になっているようです。

管を通し、麻酔を早速注入してもらうとMax10だった痛みが2〜3程度に。
完全に痛みをなくしてしまうと、子宮が収縮していきむタイミングがわからなくなってしまうため、無痛分娩でも痛みは0になりません。
無痛分娩は硬膜外麻酔というもので行われ、麻酔を注入してから効果が出るまでに20〜30分程度かかるそうです。
私は順調に進んでいるということもあり、先生に直接注入してもらう効果の早い麻酔を最初に使用してもらいました。

そのあとはその麻酔が切れてきて、痛みに耐えられないと思ったタイミングで自分でボタンを押して麻酔を注入していきます。
先にも述べた通り、麻酔が効いても0にはなりません。
深呼吸しながらひたすら耐えるのみです。
無痛分娩では、分娩時間が長くなることが多いそうです。
助産師さんからは夕方くらいかなと最初に言われ、この痛みが夕方まで続くのか…と愕然としました。

4.夫のセコンド
出産には夫が立ち会ってくれましたが、非常に助かりました。
助産師さんに積極的に指示をもらい、テニスボールを持ち前の力で押し当て、握る手は私の握る力よりも強く痛いくらいに握ってくれました。
おかげで痛みも紛れてなんだか面白くなり、笑える余裕もありました。
すごく頼りになったと出産後話すと、セコンドは上手いからねとパワーリフティングのセコンドワークを引き合いに出していました。

ピースできる余裕がありました

5.いざ出産
9時頃に麻酔を入れて2時間程度経ったところで、子宮口をチェックしてもらったところ、パツンと破裂した感覚と共に自然に破水。
子宮口も全開になったということでいよいよ出産へ挑みます。
夕方までかかるかもと言われていたのに午前中で全開になり、助産師さんには褒めていただきました。

トレーニングを積極的に行っていた経産婦さん達にトレーニング種目になぞらえた分娩時のいきみ方を聞くと、デッドリフトとアイソメトリックプルの2種目があげられました。
2種目とも下から上にバーベルを引き上げる(引き上げようとする)種目。
地面をしっかり蹴って全身に力を入れて全力を出すことが重要なようでした。
産前のトレーニングでは2種目とも取り入れ、備えていたので実際はどっちかな?と陣痛の合間に内心ワクワクしていました。

いざ出産の時。
陣痛のタイミングに合わせて分娩台の横のバーをしっかり握っていきんでくださいとの指示を受け、まず1回目。
ここではあまり感覚がありませんでしたが、頭が出たよとのこと。

呼吸を整えて大きく息を吸って吐きながら2回目。
お腹の圧がスルッと抜けて楽になった感覚と共に出産しました。
時刻は11時16分でした。

私のいきんだ感想はアイソメトリックプル。
動かないバーベルを全力で引き続けるイメージです。
分娩台の持ち手はパラレルグリップで握ることになるので、ヘックスバーでのアイソメトリックプルが近かった気がします。

さて、生まれた瞬間の感想は感動というよりも終わった!という達成感。
夫にへその緒を切ってもらい、あたたかい生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこさせてもらった時に、やっと生まれたんだなと実感が湧いてきました。
意味もなく3回のいきみで生むと周りに宣言していましたが、結果的に2いきみで生むことができました。
最終的に麻酔は最初に入れてもらった1回と、自分で入れるボタンを押した1回、の計2回でした。

6.その後
会陰の切開はしませんでしたが、自然と裂けたので縫合してもらい2時間ほど分娩台の上で過ごした後、病室へ移動。
4日間の入院を経て退院しました。
会陰の痛みは2〜3週間ほどでなくなりましたが、しばらくは排尿も排便も怖かったです。

7.出産の感想
まずは無事に出産できてよかったなということが一番です。
交通事故に例えられるくらい出産は母体にダメージがありますが、しっかりと準備をして出産に望むことでその事故のダメージを少しでも減らせる可能性があると出産を経て感じました。
無痛分娩だったことも影響していると思いますが、同じ日に出産した方々と比べて私は明らかに元気でした。

8.最後に
自分の出産の経験を忘れないためにも、今回のコラムはこのようなレポートを書かせていただきました。
最初にも述べた通り、これはあくまでも個人の体験・感想です。
準備していても何が起こるかわからないのが出産だと思います。

人生で数回あるかないかの出産。
実際に出産をする方も、それをサポートする方にとっても少しでも良い思い出になるよう、協力していきたいです。
妊活中、妊娠中や産後の方でもサポートできますので、興味のある方はぜひFTGYMへお越しください!

◆コラム執筆者

福島未里(ふくしまみさと)
静岡県富士市FTGYM所属
FTGYM(https://ft-gym.com/)

ベスト記録
パワーリフティング(ノーギア)
SQ145kg
BP113kg(一般女子57kg級日本記録)
DL165kg
TL423kg(一般女子57kg級日本記録)

2013年度
アジアベンチプレス選手権大会(フルギア) ジュニア57㎏級1位
2014年度
世界ベンチプレス選手権大会ジュニア57㎏級(フルギア)2位
2017年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57㎏級1位
2018年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級1位
2019年度
世界ベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級 5位
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会 一般女子57kg級1位
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子63kg級1位
2021年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級2位
2022年度
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会一般女子57kg級1位

保有資格
日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー
NSCA公認CSCS
健康運動指導士
柔道整復師

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