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学連の大会に出よう! (全日本学生ボディビル・パワーリフティング連盟について)

みなさんいつもご覧いただき有り難うございます。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。

すっかり気温も暖かくなりそろそろ半袖で通勤していても変では無い暖かさになって参りましたが、皆様如何お過ごしでしょうか?

私は最近電車通勤を始めたのですが、朝の混み合う電車の中は、ただひたすら息苦しく窮屈で何も出来ない無駄な時間でしか無いので、とにかく時間が早く過ぎ去って欲しいと願うばかりなのですが、しかし嫌だ嫌だと思っていても乗らないわけにはいかないので、何かこの無駄な時間を有効活用できないかと考えて、電車の中ではずっとつま先立ちで立ってバランスをとりカーフを鍛える時間にすることにしました。

これは学生時代に社会人の先輩に「社会人になったらもっと時間が無くなるんだぞ!」「だからカーフなんてのは毎日の通勤電車でずっとカーフレイズをして鍛えている人もいるぐらいだ!」とアドバイスをしていただいた事を思い出してやり始めたのですが揺れる車内でつま先立ちで静止するのはかなり難しく、また混雑する車内では前後左右の人との間隔も無いに等しく、フラフラ動いてしまったり踵を下ろしてしまうと誰かの足を踏んでしまう可能性が高いので、トラブルにならないためにも一度つま先立ちを始めたら次の停車駅までは意地でも踵を下ろすことは出来ません。

私は元々というか生まれつきカーフが小さくてトレーニングをしてもあまり大きくなったようには思えないため「どうせ太くならないしな」と投げ槍になり真面目に取り組むことが出来ていない部位でした。今回はある程度の緊張感を持って取り組む事が出来ているため弱点克服のための良い時間となっています。

ハイヒールで通勤をしている女性を見ていると踵を上げて静止するぐらい何て事ないように思っていましたが、これがなかなか想定以上のキツさでして、最初は1駅キープし続けるのが限界でしたが徐々に慣れてきて、途中の乗換駅までは準急か通勤快速に乗ると3〜4つの駅に停車するので最近では合計4〜5セット全てキープし続けられるようになりました。

ただ乗換駅に到着したときにはカーフがパンプしてガチガチに張っているため暫くは歩き方がスキップをしているような変な歩き方になるので、エスカレーターを上っている間に段差を利用してしっかりストレッチをしなければ変な人だということがバレてしまいます。

先日同じように電車に乗り込むと偶然目の前の席が空いて座れてしまったのですが、完全にカーフを鍛えるメンタルを作って乗り込んだため拍子抜けしてしまい、しょうが無いのでシーテッドカーフレイズのように座席に座りながらつま先立ちでアイソメトリックをかけてキープしたのですが、こちらの方がバランスをとる必要がない分カーフに力を込めることに集中できるがあまり車内で完全に攣ってしまい混雑しているから伸ばすことも出来ず危ないところでした。

何はともあれトレーニングでもダイエットでも何でもそうですが一見マイナスに思えるようなことでも発想を転換するとプラスに転じることは良くある事なので、皆さんも嫌だと思うことを逆に利用してプラスに転換できるようにしてみては如何でしょうか?

【部活としてボディビル・パワーリフティングをやろう】

さてそんなカーフを鍛える春なのですが、春といえば新生活ということで我々大学で働く者達にとっては新入生を迎えるシーズンであります。

このコラムでも何度もご紹介させていただいておりますが、私は関西大学学生S&Cという学生S&Cコーチを育成するクラブの監督を務めていて、うちのクラブもコロナ禍で色々と制約はあるものの何とか新入部員を迎えようと新歓活動に精を出しています。
関西大学学生S&CクラブTwitter
関西大学学生S&CクラブInstagram

このクラブの特徴は学内でトレーニング指導者として活躍する学生コーチを育成する団体であると共に関西学生ボディビル・パワーリフティング連盟に加盟し、学生ボディビル・パワーリフティング連盟の大会に出場することの出来るクラブであるということです。

もちろんメインの活動は関西大学の体育会に所属する選手のサポートやトレーニングルームを利用する一般学生へのトレーニング指導ですが、ウエイトトレーニングやコンディション作りの実技能力を向上させて指導力に繋げる一環として所属する学生にはボディビルやフィジーク、パワーリフティングなどの試合にも積極的に参加し自分の身体も磨くようにと推奨しています。

しかし試合に出たいというだけならば日本パワーリフティング協会(JPA)や日本ボディビル・フィットネス連盟のジュニア部門でも良いかも知れません。

ただ他の競技を行う大学生と同じように「大学選手権」あるいは「インカレ」といった「大学日本一」を争う大会に出場することが出来るのはこの学連に所属している各大学の選手だけです。

私自身も大学時代はこの学連の大会に出場しライバル達と出会い、目標に向かって互いに切磋琢磨する事で充実した学生生活を送り、多くの仲間を持つ事が出来ました。

そこで今日はそんな学連の話をしてみたいと思います。

【ガクレンとは?】

それではここでいうガクレンという組織は果たしてどんな組織なのでしょうか?

どの競技スポーツでも同様ですが高校までと大学とでは運営の方法が少し違います。それは大学のカテゴリーになると多くのスポーツ団体では学生が組織を運営する、あるいは運営に参画するようになります。

例えば高校の運動部が練習場所を確保したり試合に出たりする際に多くの場合は顧問の先生や監督が場所を確保したりメンバーを登録したりという事務的な手続きを行ってくれると思います。

しかし大学になるとそれは各大学の主務やマネージャーといった役割を担う学生が行います。

また高校までは大会を運営するのは顧問の先生や監督など管理者・指導者側が連携して組織する○○県高校体育連盟○○競技専門部といった先生方で作る組織とその競技団体の各地方組織(○○県○○協会)が運営してくれて、選手はそれに参加すれば良いだけでしたが、大学になると多くの競技では各地方の学生競技団体(○○県学生○○競技連盟)に所属・登録する各大学のクラブが役員や理事といった名称でその組織に学生を出向させ各大学が共同で組織を運営するというスタイルをとっています。

つまり簡単に言うと、大人が準備して子供が競技するだけにしてくれているのが高校までで、大学になったら学生が準備して自分たちで競技を作り上げるということです。

一例を示すと、各大学の代表理事が話し合って会場を予約して、上位団体と連携して審判などを手配して、パンフレットやメダル、トロフィーや表彰状などを準備してホームページやSNS等も使って広報活動をし、専門誌やメディアなどの取材対応も行う。

大会前日から理事は会場を設営し、今であれば感染症対策や緊急時のために安全対策などを準備し、終了後は片付けをして協力をしてもらった各方面にお礼をして反省会をする。
こんな感じです。

パワーリフティングの試合などでは午前中にシングレットを着て試合に出ていた学生が自分の試技が全て終わるや否やスーツに着替えて午後からは検量や審判、アナウンスなど運営側の仕事をする。こんな光景が良く見られるものです。

そして大学生カテゴリーのボディビル競技・フィジーク競技とパワーリフティング競技の運営をしているのが全日本学生ボディビル・パワーリフティング連盟です。

なぜこの異なる2競技が1つの学生連盟で運営されているのかの詳細や正確な歴史的な経緯は分かりませんが、同じバーベルを使用して身体を鍛える競技である事から昔から両方の競技に取り組む選手が多かったためではないかと思っています。

ただ現在は両競技とも専門性が明確化しトレーニング内容も変わっていることから学連の中でも「ボディビル寄りの大学」と「パワーリフティング寄りの大学」というように分かれてきているところも実際にはあります。

現在の傾向としては、関西はパワーリフティング寄りの大学の活躍が目立ち、関東はややボディビル・フィジーク寄りの大学の活躍が目立ちます。

ただし運営する組織としては1つなので普段ボディビル寄りのトレーニングばかりしている選手が試合前だけパワーリフティングの準備をして出場したり、本職はパワーリフティングだけど最終学年だけボディビルにチャレンジしてみたというような選手も出場しています。

またパワーリフティングの大会には参加しないけど補助員や設営でボディビル・フィジークに参加している学生が手伝っていたり、その逆も然りで普段はパワーリフティングの練習しかしていない学生がボディビル大会のためにパンフレットやポスターを準備してくれたり客席からの声援やユーモアに富んだかけ声で試合を盛り上げてくれます。

【インカレの価値を高めよう】

この学連のOBであり学連に所属する大学クラブの監督として近年危惧していることは、特にボディビル・フィジークで他団体や大手スポーツクラブが主催・運営する大会などでも大学生の部やジュニア年代の部門が用意され、その大会規模も大きく立派で華やかな舞台が準備されているので、大学生年代の選手がわざわざ学連に所属しなくても出場することの出来る立派な大会がとても増えています。そのため今後学連に参加する学校数あるいは選手数が減少するのではないかという事です。

なぜそんな心配をするのかというと、まず学連の大会に出場するためには学連に加盟している大学のクラブに所属しなければなりません。

そのためには所謂「クラブ・同好会・サークル活動」として大学からも活動を承認される必要がありますし、その中で顧問や指導者との人間関係も発生し、そのうえで他大学とも協力して、大会に参加するだけではなく運営する側としての協力をしなければなりません。

つまり学連の大会に出場するということは個人としての選手活動以外にもやるべきことや担う役割が増える可能性があるということです。

もちろん大学生のうちにこういった活動に参加し組織の運営に参画し色んな経験をすることは社会に出るための準備として大変有意義なものですし課外活動で得られる貴重な経験と言えるのですが、こういった選手活動以外の部分で得られる経験や人間関係を「余計なこと」だと考えられてしまうと学連に参加する選手が減ってしまうのではないかと考えています。

ボディビルもフィジークもパワーリフティングもわざわざ部活動に入ってまでやらなくともある程度の施設があれば個人競技なので競技力を高めることは可能です。寧ろなんの制約も無く自由気ままに練習した方が楽なのも間違いないでしょう。

煩わしい人間関係を減らしシンプルに競技力の向上だけに向き合いたいのなら部活動という制約は無い方が良いのかも知れません。

しかし大学のクラブに所属し大学の代表として学連に登録し、他大学の選手達と競いながら学連という組織を共に作り上げる事は大学生でなければ出来ない経験です。

ただただ普通に競技に取り組むよりも余計な労力を要するかも知れません、しかしその経験と得られた仲間は後の人生を豊かにする大きな財産となるはずです。

そして何より母校の名前を背負って試合に出るという事は学生スポーツの醍醐味ではないでしょうか?

そして「大学日本一」「インカレチャンピオン」を名乗る事を許されるのは学連の優勝者のみです。

私が学連の大会に出ている頃も先輩方から「加盟校が少なくなった」「参加者が減った」とよく言われていましたが、自分が大学を卒業して20年が経ち、今こうして指導者として学連に携わるようになると20年前の先輩方と同じ気持ちになっています。

ただし「レベルが下がった」という事は全くありません。むしろレベルは年々高くなっています。

今はコロナの影響でオンライン授業などもあり学生が大学に来る機会が減り課外活動も活動が制限されている状況で新入生歓迎のイベントなどもなかなか出来ない状況です。

このような苦しい状況ではありますが何とか学生達の頑張りでボディビルもフィジークもパワーリフティングも高いレベルで大学日本一が現在も争われています。

このレベルを更に向上させ競技を発展させるためにはコロナ後に如何にして加盟校を増やし参加者を増やすのか?が重要な問題です。

他競技に負けない立派な学連へと成長させるために各地方学連が力を合わせて取り組む必要があります。

【まとめ】

如何でしょうか?少しはガクレンについて興味を持っていただけたでしょうか?

もしもこれを読んでくれている大学生、あるいは高校生で学生ボディビル、フィジーク、パワーリフティングに興味を持ってくれたのなら、まずは自分の大学または進学先の大学に、学連に所属している
「パワーリフテインング部」
「ボディビル部」
「ウエイトトレーニング部」
「バーベルクラブ」
などの名称の体育会クラブ・大学公認の同好会・サークルなどがあるのかどうかを各大学の学生部など学生の課外活動について承認する部署に問い合わせて調べてみましょう。

もしそういうクラブが無い場合は、どうすれば作る事が出来るのか?をその部署に聞いてみましょう。

恐らく練習場所がある事やメンバーがある程度の人数いること、そして指導者がいる事などが条件として挙げられると思います。

そのうえで1つの方法としては、まずその大学の体育館などにあるジムやトレーニングセンターと名の付く施設で定期的にトレーニングをすることから始めましょう。必要ならば利用者講習会を受け登録をしましょう。

次にそこでトレーニングする中で一緒にトレーニングをしたり、身体作りについて興味のある仲間を作りましょう。これはジムの中で見つけなくても普通に授業を一緒に受けている仲間を誘って育成するというのでも良いでしょう。

そうして徐々にメンバーを増やして学内で「なんかトレセンに集まって筋トレしてる連中がいるらしいぜ」と噂になるぐらいまで頑張りましょう。

今は口コミというよりもSNSなどで皆さん共通の趣味を持った友達などを探す時代ですからそういったツールもしっかり活用しましょう。

ただしボディビル系の場合はどうしても裸になったり筋肉を露出した写真を載せたりするかと思いますので過激になり過ぎないように注意する必要があります。他人の名誉を傷つけたり不快な思いをさせたり誤解を招くような投稿があると公認クラブとして大学に認められる事も難しくなるでしょう。

こういったメディアリテラシーを磨く事も部活として課外活動を行う事で実践的に学べる事だと思います。

ボディビルにしてもパワーリフティングにしてもバーベル競技は緻密な戦略が求められる競技です。破天荒に滅茶苦茶やってるように見せつつもその裏に知的な一面が見えなければ本当の面白さは伝わらず勘違いされてしまいます。

「馬鹿みたいな事してるけど、でも本当はこいつら頭良いんだろうな」ぐらいが理想です。

もし「どこの大学が加盟しているか分からない」「加盟したいけどどうして良いか分からない」という人がいるのなら私のところまでメッセージを下さい。出来る範囲で力になります。

では皆さんこれからも学連をよろしくお願いいたします。

文:佐名木宗貴


ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位

ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年    全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年    日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年    関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター

資格
・日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
・NSCA認定 CSCS
・日本パワーリフティング協会公認2級審判員

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