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陪審員の役割 (近畿ベンチプレス選手権大会)

みなさんこんにちは。

今月もご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。

徐々に日が暮れるのも早くなりクーラー無しで過ごせる夜も増え、少しずつ秋を感じる頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?私は昨年同様コロナコロナで秋シーズンのスケジュールが定まらず振り回され続ける毎日です。

それはもちろん選手や関係者とその家族、スポーツにかかわる全ての人にとって同じ事で、延期?日程変更?中止?と日々更新される情報と戦いながらも何とか試合が出来るように皆が努力を続けています。

さて先月のコラムの続きですが、私がコンテストの準備をサポートしているZIPスポーツクラブ所属の2人。奈良選手と沖田選手ですが、両名共にミスター大阪の2週間後に三重県で開催された西日本ボディビル選手権大会に出場し、奈良選手は7位、沖田選手は12位という結果でした。

コラムでも書いた通りミスター大阪では仕上がり重視の調整を行い優勝・準優勝の成績を納めましたが、上位大会にあたる西日本選手権に向けて同様に仕上がり重視の調整をするのか?それともサイズを残すように調整するのか?
悩みましたがミスター大阪で2人とも若干バルクが喰われてしまっていた(厳しく仕上げ過ぎて小さくなってしまうの意味)感があったので水抜きとカーボアップを微調整し0.5~1kg程度重く仕上げて臨んだのですが、当日のラインナップを見るとバキバキパリパリ(メチャクチャ厳しく仕上がってるの意味)の選手が多く、大きさを強調しようとした事が裏目に出てしまい予想よりも順位を落とす結果となってしまいました。

これは両選手の能力の問題ではなく完全に出場選手の傾向を見誤った私のリサーチ不足が招いた調整方針のミスでした。選手の負けではなく私の負けです。

なかなか良い例えが思いつきませんが、リンゴを並べて「どのリンゴが一番奇麗か?」を審査する場合10個が赤いリンゴで2個が青いリンゴだったとします。

この場合は青リンゴが凄く奇麗だったとしても赤リンゴがある程度の奇麗さで競っていれば青いリンゴを1位につけることはなかなか無いと思います。

しかし6個が赤リンゴで青リンゴも6個だった場合は全く同じ程度のリンゴで見比べても青リンゴが1位に選ばれる可能性が50%あります。

ボディビルのコンテストも似たような部分があり、その日の選手の傾向によって審査員の評価(見る目)も多少変化する事があります。

多少バルクを犠牲にしていても骨まで届くようなカットを刻むバキバキの選手がいたとして、1人だけだと優勝まで行く事は稀です。

しかし2人・3人と居れば逆に他の多数が甘く見えてきます。その逆も然りで丸々とした大きなバルクをしている選手がいたとしても1人だと逆に甘く見えて優勝まで行く事は稀です。

しかしバルクで競る選手が2人・3人と居ると「他の連中は仕上がってるけど細いな…」と印象が変わる事があります。

そのためボディビルの大会では事前にエントリー表が発表されると

「おっ!〇〇さん出てるやん。この人バキバキやで!」

「でもこの前インスタで見たら結構甘かったですよ!」

「〇〇ジムの△△くん、このまえゴールドで見たらメチャ仕上がってたで!」

「大丈夫あの人いつも詰めが甘いから絶対ハズすやろ」

等と情報合戦が行われ出場者の傾向を読み合うのです。

また当然ジャッジも人間ですから好みがありますので

「審査員の〇〇さんはサイズ重視の人やで!去年3位の△△くんに1位付けとったもん」

「去年のクラス別ではバルク無いけどバキバキの〇〇くんをピックアップしてたで」

「あの人はポージング下手な人には入れへんよ」

等と審査員の好みの読み合いもするわけです。

昔はミスター大阪とミスター関西が同じ日の午前と午後に同じ会場で審査される事があり午前のミスター大阪で上位に入った選手がそのままミスター関西でも上位に入るというパターンがよくあったのですが、不思議と午前と午後で順位が入れ替わる事が良くありました。

それはお昼ご飯を食べ過ぎて急に浮腫んでしまったというわけではなく(そういう人もいたかも知れませんが)京都や兵庫の有力選手が数人足される事で青リンゴと赤リンゴの割合が微妙に変化し和梨や洋梨も加わる事で審査に影響が出た結果とも言えると私は考えます。

話を元に戻しますと
奈良選手はここまでの2試合で今シーズンを終えました。来年はミスター関西を確実に獲ってミスター西日本にももう一度チャレンジして欲しいと願います。

沖田選手はこの翌週にマッスルゲートというゴールドジムを運営する株式会社THINKフィットネスが開催する比較的新しい大会に挑戦し見事に75kg級で優勝する事が出来ました。

かなり長いシーズンでしたが大阪クラス別をしっかり獲った事で来年以降は7月以降の大会により集中することができるのでミスター大阪はもちろんの事、日本クラス別なんかも視野に入れて頑張って欲しいと思います。

また8月8日に京都で開催された関西クラス別選手権大会には私が監督を務めます関西大学S&Cから4回生の竹中が出場し65kg級で10位でした。

一昨年の大阪クラス別選手権のジュニア部門でデビューし昨年の学生大会出場を目指していましたがコロナ禍で全て中止となったため今年は2年ぶりの大会出場となりました。

まだまだ調整段階で十分に絞れていたわけではありませんが、なんとかギリギリ順位がついてホッとしました。本来であればここから更に調整を進め9月に予定されていた関西学生選手権を目指すところではありましたが、緊急事態宣言などの影響もあり関西学生選手権が延期された事でスケジュールを調整する事が難しくなり大学生活最後のシーズンを終えました。

非常に残念ではありますがこの悔しさを糧にまた社会人大会にもチャレンジして欲しいと思います。

続いて同じく学生S&C2回生の福田がその延期された関西学生ボディビル選手権に出場し7位と健闘いたしました。


高校まで空手をしていた事もあり骨格の大きな選手でそれに見合った筋量を付けるにはまだまだ時間がかかりますがそれでもこの調整の難しい状況でなんとか出場まで辿り着き関西大学学生S&Cとして記念すべき学連ボディビル大会への出場者第一号になりました。

残念ながら全日本学生に進む事が出来るのは上位6人という事で、全日本出場は叶いませんでしたが来年再来年に繋がるチャレンジが出来たと思います。

関西学生からの帰り「このままで終われません」と一度は10月まで減量を継続し愛知か静岡でのマッスルゲート参戦も模索したのですが既に定員に達していたようでエントリーする事は出来ませんでした。

その熱い気持ちを来年にぶつけて欲しいと思います。

ボディビルの減量というのは最初の1回目から成功する人は稀でほぼ居ないと言っても過言ではありません。しかし皆その失敗から学び飛躍に繋げていきます。

まだあと2年間も学生ボディビル大会にチャレンジする時間は残っていますので是非チャンピオンを目指して頑張って欲しいと思います。

更に更にですが9月12日に大阪府堺市で行われた近畿ベンチプレス選手権大会に私が代表を務めます関西大学S&Cの中西選手が出場しノーギア一般の部105kg級で見事に初優勝を果たしました。

関大レスリング部のコーチでもある中西選手ですが近畿大会優勝は高校(兵庫の名門育英高校)以来だそうです。次は3種パワーリフティングでも優勝を目指して頑張って欲しいと思います。

そしてこの近畿ベンチプレス選手権大会で私も2級審判として初めての審判活動を経験する事が出来ましたので、今月のコラムではその報告をさせていただきたいと思います。

はじめての2級審判:陪審員

さて3月末のコラムでもご紹介した通り2月のジャパンクラシックで2級審判員への昇級試験を受け合格し、日本パワーリフティング協会公認の2級審判員となった私ではありますが、コロナ禍という事もありなかなか審判活動を再開する事が出来ず、ズルズルと時は過ぎ本来であれば今回の近畿ベンチも別の用事で参加出来ないところではありましたが、今度は別の用事の方がコロナの影響で延期となり急遽近畿ベンチに参加する事となりました。
スケジュールが二転三転し大阪協会の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。

大会前には大阪協会の方で事前に割り当て表が役員には送付されるのですが、急遽入れていただいた私の役割はTC(テクニカルコントロール)と検量係と陪審員でした。

TCは3級時代からよくやっていたので問題無し。検量も体重を計って第一試技とセンター補助の有り無しやラックの高さを聞くぐらいなので大丈夫、しかし陪審員は3級時代には無かった役割なので念のためにルールブックを読み直してみたものの特に陪審員の役割についての細かな解説はありませんでした。

これまで自分が選手として試合に臨んでいた時の印象で言うと陪審員というのは
「審判員として位の高い人が試合の中で何か問題が無いように全体を見ている」
「ジャッジのジャッジ又は補佐的な役割」
というような印象でした。

これは大まかに言うと間違いではないものの正確には以下のような役割が存在する事が今回分かりました。

①出血など怪我をした選手に絆創膏などの手当てをする判断や許可
②コスチュームチェックで許可されているものを身につけているかの確認
③特別な補助者が必要かどうかの判断
④突発的な事情により試合進行が止まった時の判断
⑤レフリーの判断ミスが無いかの判断
⑥選手やそのコーチに失敗試技の理由を聞かれた際の説明対応
⑦日本記録の認定
ざっとこんな感じです。

全体的に言える事は審判員やTCの役割を補佐するという事、ダブルチェックの役割がメインであると思います。

⑥については陪審員特有の役割と言えますが実際には選手が自ら失敗理由を聞きに来ることは稀でセコンドについているコーチがチャレンジしてくることはたまにあります。

どちらかというとフルギア3種の試合で多いという印象です。またノーギアでも国際大会では海外の選手・コーチはこの権利を行使する事が多いです。

日本人の場合は控え目なのと英語が苦手だという事であまりチャレンジしない場合が多いのですが、物怖じせずに理由が分からない場合は積極的に失敗理由について意見を聞きに行った方が良いと思います。

国際大会の審判や陪審員も英語圏の人とは限りませんので、たどたどしくても簡単な単語だけでも問題ありません。Why RED?だけでも案外通じますし稀に本当に意味の分からない判定をされる事もありますので。

陪審員席からの見え方

今回試合が行われた堺市立大浜体育館は今年の4月にリニューアルオープンした奇麗な体育館です。

陪審員の席は試合会場のこの部分でした。

これは試合によってもう少しプラットフォームを斜めから見る位置にある場合もありますがだいたいの試合会場では主審の背中側に席がある事が多いです。
この位置からだと試技の全体像が良く見えるので

選手の試技だけでなく3人のレフリーの動きもしっかり確認する事が出来ます。
試技が一番よく見える開けた位置であることから三脚が置かれたりジム仲間がスマホを片手に陣取る撮影スポットにもなる位置です。

また今回はブロック大会であるため日本記録が認定される試合です。
そのため陪審員席には1kg、500g、250gの記録用プレートが用意されており

日本記録への挑戦があると使用されていました。
また机の上には最新の各カテゴリー別の日本記録一覧表が用意されているので

間違いなく現在の日本記録への挑戦となっているかをその都度確認します。
もしも同じ日に同じ日本記録に挑戦する選手が複数いたりカテゴリーを超えた重量だったりと日本記録挑戦については細かなルール設定があるので事前にある程度ルールブックで確認しておいた方が良いかと思います。
そして日本記録に成功した場合に記入する申請書も用意されています。

こちらは試技に成功すると試合後にその試技に関わった審判と陪審員のサインが必要です。

はじめて日本記録への挑戦試技を判定する

今回の大会で私が陪審員を担当したのは4つのグループで全てのフルギアとノーギアの女子とノーギア男子の105kg級以上のクラスです。
その中で陪審員として記録の認定に関わった選手が3名。陪審員としてセッションを担当しながら副審が3級であったため日本記録のかかる試技だけ副審に入りジャッジしたのが3名でした。
※ダブルエントリーの選手もいるので重複はしています。

3級時代は逆の立場で日本記録への挑戦となるたびに2級以上の方に交代していただいていたのですが、今回は初めて日本記録挑戦のために副審に入り判定を行いました。

皆さん安定した試技で殆どが迷うことなく白ボタンを押す事の出来る成功試技であったと記憶しています。

3級の頃はいつも日本記録への挑戦試技になるたびに席を立ち交代する時に「早く自分で判定出来るようになりたいな」と思っていましたが今回やっとそれが叶って「2級を取って良かった」と思いました。

また先に記した様に日本記録を成功させると申請書に審判と陪審員はサインをする事となるのですが名前を書く時に「この記録に自分も関わった」という気持ちになりとても嬉いものでした。

陪審員をやってみて

コロナ禍で久々の審判活動でしたが大阪協会関係者ならびに出場された皆さんのおかげで今回も良い経験を積む事が出来ました。

ずっと3級のままの方が大役を任される事も無く気が楽なのでは?と思う事もありましたが、今回陪審員や日本記録への挑戦試技の審判をやってみて2級を取得して良かったなと感じました。

JPAでは2級以上の審判は審判技能向上のために2年間の間にパワーリフティング3種のブロック大会以上の大会で審判又は陪審員を2回以上行わなければならないとされています。

今回の近畿大会はベンチプレス大会ですのでこれにはあたらないため次は近畿パワーリフティング選手権かジャパンクラシック、或いは全日本学生選手権で陪審員や審判の経験を積みたいと思います。

文:佐名木宗貴


ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位

ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年    全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年    日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年    関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター

資格
日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
NSCA認定 CSCS
日本パワーリフティング協会公認 2級審判員

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