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第1回 世界クラシックベンチプレス選手権レポート(前編)

皆さんこんにちは!SBDコラムニストの鈴木佑輔です。

今回は5月に参加した世界クラシックベンチプレス選手権について書いていこうと思います。

これまでの世界ベンチプレス選手権といえばフルギアのベンチプレス大会のみでした。

いわゆるノーギアの世界大会がIPF(世界パワーリフティング連盟)では開催されておらず、ノーギアの大会は世界各地の国内でのみ行われており、国際大会としては2013年にフィリピン・ケソンシティにて行われたアジアクラシックベンチプレス選手権が最初でした。

そして2016年になってようやく、記念すべき初の世界クラシックベンチプレス選手権が5月15日~21日にかけて開催となったのです!

男女各オープン・マスターズ1~4・サブジュニア・ジュニアカテゴリーに分かれ、参加人数は男女合わせて259名が参加しました。

8泊10日と長い期間、南アフリカという未知なる国で過ごし、日常とは全くかけ離れた生活を送れました。1日ごとに印象深かったことを書いていきたいと思います。

5月13日(金)

南アフリカ共和国、玄関口は首都ヨハネスブルグです。

ここは世界でも有数の犯罪都市であり、入国した瞬間から緊張感が漂います。

入国審査自体は何のトラブルもなく、日本人であることの有利さを感じました。

(他国の人は別の窓口で長く待たされる。)

入国~関空組と合流~バッグ受け取り~旅行会社のエージェントと合流という流れですが、ここで多少のトラブルが…自分は全員がバッグ受け取り&換金するのを待っていたのですが、合流場所へ行くとほかの人が誰もいない!!と思ったら、現地のタクシードライバーに集団でぞろぞろと外へ連れ出されていました!

空港へ降り立ったらその瞬間から全てのことが自己責任です。

ですが、やはり集団行動ということで個々人が自覚を持って行動しなければ全てのことに遅延が生じます。

自分も責任者の一人として自覚が足らなかったのですが、全員を把握しながら行動していくことを心に誓ったのでした…

ホテルまでは空港からバスで約2時間、ひたすらサバンナを突き進む感じで景色も味気なくここで足りない睡眠を補いました。

ホテルはポチェフストルームのElgroHotelという素晴らしいホテルで部屋にはきちんとバスタブもあり、中庭にはプールもあります。

スタッフも非常に気さくで大体の注文には応えてくれました。

例えば昼食のカレーに飽きたのでスパゲッティにしてくれたり、部屋に冷蔵庫がないから持ってきてくれといえばすぐに用意してくれたり。

会場は同ホテル内で移動も必要なく、外に出る必要が全くないくらいでした!実際自分が外に出たのは18日夜にマスターズ懇親会でステーキハウスに言ったのと、最終日に全員でサファリに行った時くらい。

正直何かと忙しくて外に出る暇もなかったのですが。。。初日は午前中にホテル到着&夜テクニカルミーティング参加くらいで、ゆったりと過ごしました。

5月15日(日)

大会初日、まずはマスターズ1~4・59kg級と66kg級がスタートします。

日本選手団からは早速6名が参加。

軽量級では本当に日本人選手は強く、世界記録が更新される機会も多く見られました。

ここでのセッションをチーム全体がいかにスムーズにサポート出来るかで、選手団としてのまとまりが決まります。

6名と1セッションとしては大人数でしたが、団長を筆頭に2日目以降の選手が頑張ってくれたおかげでトラブルもなく、非常に快適に試技が出来たかと思います。

これでチームのまとまりが完成しました!最初のセッションは緊張感が半端じゃないですが、これにより第2セッション以降へバトンタッチが出来ます。

印象に残ったのは、審判と補助員が初日ということでどのような動きをするのか予測が難しく、実際に想定外の状況になりました(センター補助がスムーズでないこと、審判の見る視点がいつもとちがうことなど)が、それにも慌てることなくアジャスト出来ていた点です。

特に世界記録がかかっているような相当なプレッシャーの中、意地を見せてくれた亀谷・高田両選手には尊敬の念を禁じ得ませんでした。

M1・59kg級の吉澤選手は第1試技を落としながらも見事に修正し、第3試技では思い切った自己ベスト狙いを成功させて驚きでしたし、M2・66kg級の池上選手は片足が義足ながらもハンディキャップをものともせず堂々の銀メダル。M2・59kg級の大野選手も競技歴が浅いことを感じさせない試技でしたし、最年長M4・66kg級の赤城選手も第3試技までナローグリップで110kgを成功させていました。

初日の手探り状態で、ここまで好記録を出せるということに皆さんの肝が据わっていることを再確認出来ました。

本当に上ずらなくてセコンドもしやすかったです。

第1セッションの後、そのまま開会式が始まります。

自分も日本選手団代表としてステージに立たせて頂きましたが、多くの国の選手が集まる中日の丸を掲げられて本当に誇らしい気持ちとなります。

オープニングセレモニーではIPF会長のガストン氏や南アフリカ協会長のハニー氏の言葉に、第1回目の世界選手権に参加することが出来て、改めて気を引き締めるとともに嬉しい気持ちになりました。正直聞き取りづらい英語ではありましたが…

第2セッションはM1・2の74㎏級です。

ここで自分はM2大谷重司選手(パワーハウス所属)のセコンドにつかせて頂きました。

彼は全盲の選手ですが、日本代表として140kgという立派な数字で見事銅メダルをゲット!短い時間でしたがタッグを組めて本当に充実した時間でした。

まさにド緊張という状態でしたがきっちり決めてくるのが素晴らしいメンタルです。

終わった後は涙とともにワインを嗜んでおられました。

そしてM1では守山選手が圧勝で金メダルをゲットしておりました。

守山選手は仕事の都合で翌日に日本へ帰国されましたが、都合がつけばもっと長く居られれば試合後は気分よく一緒に楽しめたのに残念です!

次回はぜひフル日程で参加しましょう!

第3セッションではM3・4の74kg&83kg級の3名が出場しました。

ここでは自分はセコンドを外れ、観客席から初めてステージでの試技を見ていましたが、観客席からの光景とセコンドからの光景が印象として違った風に見えました。

セコンドはサイドレフェリー視点、観客席からはメインレフェリー視点となるため、選手の試技の良し悪しの印象が変わります。

リフターの控室には決まった人数しかセコンドが入れないため、観客席での印象を伝えるための連絡係が必要なように感じました。

3名とも自己ベストに近い形で終われたので、皆さん満足げな様子でした。

初日の最終セッションはM1・2の83㎏級です。

自分はM1小口選手(ストロングライン所属)のセコンドにつかせて頂きましたが、M2小島選手・山根選手ともとても良い雰囲気で、3人ともリラックスしています。

セコンドとして、ウォームアップをさせすぎずに選手をコントロールし、本番で力を出させるということの重要性を学びました。

大きな大会では不安を打ち消すかのようにアップをやりすぎてしまう選手が多いですが、3選手とも適度な量で我慢してくれたので、本番試技に良い状態で入れたと思います。

初日だけで日本マスターズ選手半数以上が出場する怒涛の1日でしたが、初日が終わった段階ですでに他国の選手とも打ち解けてきて、それぞれライバル同士がコミュニケーションを取っていて、大会自体がとても良い雰囲気になりつつありました。

ちなみにこの日から昼食はカレー・夜はバイキングという状態に既に飽きが来ていますが、食べられるだけマシなので文句は言えません…

5月16日(月)

第1セッションは女子軽量級から始まります。

日本選手ではM1・47kg級小林ナオコ選手(湘南ベンチプレッサーズ)が大注目を浴びています。

注目を浴びる中、笑顔で試技を重ねるところに風格すら感じます。

第3試技では見事92.5kgを決め世界新記録樹立をし、ステージ上で涙を流す姿に日本選手一同が感動をもらいました。

第2・第3セッションでは日本人選手の出場がなかったため、いったん部屋に戻り小休止です。

ちなみに自分の部屋の窓からはアップ場前が丸見えでしたので、昼寝をするにはややうるさく…音楽を聴いたりでリラックスしておりました。

第4セッションはM1・2の93kg級です。

M1渡辺選手(個人)・M2中澤選手(K‘sジム)2名の出場で、ここでもセコンドに入らせて頂きました。

2日目以降は初日に出場した選手がセコンドにどんどん回ってくれるので非常に楽です。

渡辺選手は本人も気にしておりましたが肘の伸展が不十分なため、スタート合図がかからず無念の失格となってしまいました。

優勝はイギリスのシェリダン選手で180kgだったため、自力で勝負出来ていればあるいは…と思って余計に残念です。

リハビリをして、来年絶対にリベンジしてほしいと思います。

メインセコンドとなった中澤選手ですが、その体格と厳つい風貌からは想像出来ないくらい穏やかな選手です。

そして、極度の緊張をされていまして、唇がかっさかさでしたが、アメリカのマイク選手と真っ向勝負の形となりました。

結果としては体重差で銀メダルとなってしまいましたが、セコンドとしては難しくも面白い展開でとても印象深かったです。

特に第3試技の重量変更がめまぐるしく、アメリカのチームとしての強さも感じました。

意外とアメリカ人も細かく考えているんだなーと失礼なことを感じてしまいました。

3試技とも成功を重ねられたので、来年はてっぺんに立ってほしいと願います。

5月17日(火)

マスターズカテゴリの最終日、午後のセッションからM1・2の105kg級が始まりました。

M1は中村敏男選手(TXP)、M2は小野選手(個人)、お二人は国際大会経験者でもありますので、落ち着いて試技を進められているように見受けられました。

重量級になってくると、いかにマスターズとは言え重量も200kg超がどんどんと出てきます。

外国勢の層が厚い中、両選手とも自分の試技をきちんと出来ているようでしたが、メダルはならず…ただ、自分よりも強い選手が多い環境は必ずプラスになります。

来年以降の成長につながると思います!

最後のおおとりで出場したM1の+120kg級で日本人離れしている石井選手は検量172.8kg。UAE選手に続いて2番目の体重です。

競技歴もまだ2年目ということで若干緊張していたようですが、この日は日本選手団オープン・ジュニア・サブジュニアの選手もホテルに到着し、最多人数での応援です。

皆の期待を一身に受け、ステージに向かいました。

周りの外国人選手も非常に大きいので選手控え室は気持ち湿度も高めです。

自分と同じくらいの体格がたくさんいるという慣れない状況の中、淡々と試技を進め、きっちり3本成功。

大会自己ベスト222.5kgを成功させ、見事に優勝!この瞬間日本マスターズ選手の全員が本当に嬉しかったと思いますし、自分もステージに走りこんで大きな体に飛びついてしまいました。

マスターズの日本選手団は本当に強く、チームワークも抜群で良い雰囲気の中大会を終えられたと思います。

実際、M1最優秀選手賞は59kg級吉澤選手が獲りましたし、チーム戦もM1・2を日本チームが優勝だったので、これからも日本マスターズチームの活躍は続きそうです。

オープンカテゴリーの選手も負けないようにしなければ。

マスターズの選手の皆さんのサポートにつけて、本当に光栄に思います。

この経験は自分にとってかけがえのない宝物になりました。

選手の皆さんが心から感謝してくれて嬉しいですが、たぶん自分が皆さんに感謝しているほうが大きいです!笑

 

そして後半戦へ

 

自分の出番の前にマスターズの皆さんのサポートという一大イベントを終え、なおかつ残りの日本選手団が合流したことで若干気を緩めた自分はこの後南アフリカという遠い国で苦しむことになるのでありました…

 

男子リザルト

女子リザルト

 

 

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■コラム執筆者

鈴木佑輔
長野県パワーリフティング協会副理事長
所属 B.A.D.
http://www.bodyartdesign.net/
ジャパンクラシックベンチプレス選手権5連覇
2010年~2015年
2014年アジア・オセアニア選手権MVP
66㎏級ベンチプレス ベスト記録 190.5㎏
日本記録・アジア記録保持
74㎏級ベンチプレス ベスト記録 212㎏
アジア記録保持

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