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第4回世界女子クラシックパワーリフティング選手権大会 日本代表選手インタビュー

参加者数で世界最大のパワーリフティング国際大会であるIPF世界クラシックパワーリフティング選手権の開催が今年も近付いて来ました。

今年の開催地はアメリカ・テキサス州、5月1日現在のエントリー人数は男女合わせて約900人(リザーバー含めず)、フィンランドで開催された昨年の同大会では最終的に約750人の選手が参加しIPF史上最大の国際大会となりましたが、今年は更に多くの選手が参加すると見られます。

今年で4回目となる世界クラシックパワーリフティング選手権ですが、残念ながら一般クラスで優勝した日本人選手というはまだ一人も現れていません、しかし過去に2度の準優勝を遂げ今年も一般クラスの日本人選手で最も金メダルに近い位置にいるのが女子47kg級の可児理恵選手です。

今回はコラムでは世界クラシックパワーリフティング選手権日本選手団のエース可児選手のジムにお邪魔して合同練習とインタビューを実施、世界クラシックパワーリフティング選手権に向けての意気込みや普段の練習について聞かせて頂きました。

 

【可児選手紹介】

画像1

身長   149cm

階級  47kg級

ベスト記録

ノーギア女子47kg級
スクワット  113kg  (日本記録)
ベンチプレス 75kg
デッドリフト 152.5kg (日本記録)
トータル   338kg  (日本記録)

 

主な戦績

世界クラシックパワーリフティング選手権

2013年 女子一般47kg級 2位

2014年 女子一般47kg級 2位

2015年 女子一般47kg級 5位

ジャパンクラシックパワーリフティング選手権

2010年度 女子一般47kg級 2位

2011年度 女子一般47kg級 2位

2012年度 女子一般47kg級 1位

2013年度 女子一般47kg級 1位

2014年度 女子一般47kg級 1位

2015年度 女子一般47kg級 1位

国体公開競技

2015年和歌山 女子の部 2位

 

【練習風景】

今回は岐阜県可児市の可児選手のご自宅にあるフェニックスジムにお邪魔させて頂きました。

可児選手は旦那さんの暢也さんもノーギアの全国大会や国体で活躍するパワーリフター、中学一年生の娘さんの遥さんはウェイトリフティング選手というアスリート一家で、この日は日曜日だった事もありご家族3人でトレーニングをされていました。

この日の可児選手の練習はベンチプレス、大会(国体東海予選)が近い事もあり試合形式でベスト記録の重量を超える77kgに挑戦。

《可児選手ベンチプレス77kg》

ベンチプレスと胸・肩の補助種目を行った後は、得意種目であり世界大会で3年連続種目別銀メダルを獲得しているデッドリフトのフォーム確認を行っていました。

今年はデッドリフトで種目別金メダル獲得の期待もかかります。

写真2

 

可児選手は既に非常に高いレベルにありながら現在も更に記録を伸ばし続けており、自らの日本記録を毎年着実に更新しています。

そして今回は一緒に練習をしていた娘さんの遥さんの練習も見学させてもらいました。

遥さんはウェイトリフティングと陸上競技を行っており、この日の練習では、お父さんの暢也さんの指導の元、フロントスクワット→バックスクワット(ボトムストップ)→スナッチデッドリフトのメニューをインターバル1〜2分でこなしていきます。

インターバルが短くセット数も多い非常にハードなメニューを平然とこなしていくのに驚きました、現在体重43kgでバックスクワットのMAXは既に80kgを超えているそうです。

これだけでも大変なメニューですがこれは二部練習の一部で、夜からはまたスナッチやジャークといった種目の練習を行うそうです。

《遥さんフロントスクワット62kg6回》

 

トップウェイトリフターを目指す遥さん、今年2月には兵庫県で開催された全国招待ウェイトリフティング小中学生大会Y13(中1・小6・小5)の部に参加し見事優勝しています!

尚、この時の記録、スナッチ44キロジャーク51キロトータル95キロは全国高校女子の48キロ級の標準記録に達しています。

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この日はサポート役に徹し奥さんと娘さんの指導をしていた暢也さん、試合会場でも常に可児選手のセコンドに付き奥さんを支えています。

暢也さん自身も5月15日にパワーリフティング国体東海予選を控えており、ご家族の指導やサポートの合間に時間を見つけてご自分のトレーニングをされているとの事でした。

 

写真4

【可児選手インタビュー】

 

―可児さん本日はインタビューにご協力ありがとうございます、よろしくお願い致します。
まず可児さんがパワーリフティングを始めたきっかけとパワーリフティング歴を教えてもらってもよろしいでしょうか?

こちらこそよろしくお願い致します。

私がパワーリフティングを始めたきっかけは主人が家にバーベルを買ってきて「試しにやってみるか?」と言われ軽い気持ちでベンチプレスをやってみたら35kg挙がったことです。(当時の体重43kg)

これをきっかけにパワーリフティング3種目やってみようということになり1年後の愛知県パワーに初参戦となりました。

結果はスクワット72.5kg ベンチプレス50kg デッドリフト97.5kg トータル220と非常に弱かったですね・・・。

とにかくデッドリフトが下手で大嫌いでした。

最初の5年くらいずっとナローデッドでやっていましたが、5年やっても125kgで止まってしまいました。

弱点のデッドリフトを克服するまで5年もかかってしまいましたが、ワイドのフォームを使えるようになると2年半で152.5kgまで一気に伸びました。

デッドリフトが伸びてくるとトータルも300を軽く超えていきました。

今はデッドが得意種目ですが、最初は1番の苦手種目だったんです。

現在パワー歴は8年になります。

 

 

―学生時代はやはり運動部だったのでしょうか?

小学6年の時に新体操をやってましたが始めるのが遅すぎて、小さい時からやっている子にはかないませんでした。

1年で辞めてしまいました。

中学、高校は吹奏楽部でクラリネットを吹いていました。

文化部ですが、もともと柔軟性と筋力だけはちょっとありました、スポーツテストの斜め懸垂は何回でもやっていて、先生に止められるまでやっていました(笑)

腕相撲は女子に負けたことはないです。

 

 

―世界大会に向けての目標や意気込みについて聞かせてください

世界大会で優勝したい気持ちは常にあります。

年々レベルが上がっていますがチェン選手(台湾)の出ない今年はチャンスだと思います。

デッドリフト勝負になると思うので2本目でメダルを決める試技、3本目で優勝かけて勝負したいです。

皆さん応援のほどよろしくお願いします。

 

 

―普段の練習メニューを教えていただいてもよろしいでしょうか?

・オフ期の練習

オフ期はスクワット週2回、ベンチプレス週2回、デッドリフト週1回を基本に6週~8週サイクルを組んでやっています。

ボリュームはスクワット5~8レップを5セット、ベンチプレス5~8レップを6セット、デッドリフト3セットを基本としています。

計画的に行っていますが、調子が良いと感じたらサイクルの途中でも積極的にセットベストを狙っていきます。

3種目以外にも必要に応じて、弱点部位の強化を狙った補助種目、左右差を整える補助種目やプライオメトリクスをやっています。

3種目同時に伸ばすのは難しいのでその時に伸びている種目1つか2つに絞って重量にこだわって伸ばしています。

伸び悩んでいる種目はがむしゃらに頑張ってもあまり良いことはないですね。

まずは伸びない原因がどこにあるのかを考え、強度を落としてフォーム作りに専念し、弱点部位を補助種目で鍛えたり、身体のバランスを整え不調のある箇所の動きを良くしたり、新しいフォームを研究したりします。

後々伸ばすための下準備をする感じです。

例えばスクワット&ベンチプレスが伸びていてデッドリフトが停滞している時は、伸びる種目は重量にこだわって頑張ります。

一時的にデッドリフトの強度を落としたりボリュームを減らすことで、伸びている種目によりエネルギーを注ぐことができると思います。

 

・試合期の練習

年に2回くらい大事な試合に絞ってピーキングを行います。

ピーキング期間は5~6週で、試合が近づくにつれて少しずつ練習量は減らしていき集中力を高めていきます。

試合形式での重量は週ごとに増やしていきますが、試合の第3試技で挑戦する重量はやりません。

ピーキング中に気をつけているのは試合に向けて疲労を抜いていき大きなケガをしないことです。

あとは精度を保ちつつ高重量に慣れていくことですね。

軽い重量でも1本1本試合の第3試技だと思って練習しています。

なので私は、ピーキング=MAX挑戦大会とは考えていません。

あくまで試合にピークを持ってくるための準備と考えています。

例えば試合で120kg狙う場合は、練習で115kgをきれいにスパッと挙げきれば120kg行ける自信は十分つきますし、失敗するイメージを残さないように、挙がった⇒挙がった⇒成功するイメージの積み重ねを大切にしています。

 

 

―食事やサプリメントで気をつけている点、重視している点はありますか?

たんぱく質の摂取量や野菜不足に注意しています。

野菜ジュースではなく本物の野菜を食べます。ブロッコリーやニンジン、ナッツなどよく食べています。

お菓子やスイーツが好きですがあまり食べないようにしています。

炭水化物は玄米やイモ類を主食にしています。

粉物(パンや麺類など)はあまり食べません。オフ期でもあまり脂を乗せないように気をつけていて、体重はリミット+1kg(48kg)くらいに留めています。

お酒やタバコは競技にマイナスなので一切摂りません。

結局は食事も含めた体調管理が記録向上につながってくるのかなと思います。

コンビニやファーストフードはなるべく避けて、できる範囲でですがクリーンなものを食べるようにしています。

サプリメントはアミノ酸やプロテインなど基本的なものを摂っています。

 

 

―目標とする選手がいれば教えて頂いてもよろしいでしょうか?

台湾のチェン・ウェイリン選手です。彼女のパワーは脅威的ですね。

 

 

―将来的な大きい目標、記録はなんですか?

当面の目標はフォーミュラ500です。体重46.5kgとしてもトータル370kg挙げなければなりません。

かなり難しいと思いますが、4年以内に必ず達成したいです。

 

 

―社会人の選手には仕事や家庭と練習の両立に苦労している方も多いですが、可児選手は仕事と子育てをしながら日本のトップ選手として活躍しています、これらを両立する秘訣みたいなものはあるのでしょうか?

一番大きいのは主人の父母と同居していることです。

いろいろと手伝ってもらっています。

あとは自宅のすぐ横にジムがあることです。

インターバル中に家事をすることもあります。

テレビを見たりする時間はあまりないですね。

余分なものを削って時間をつくります。

ですが睡眠時間を減らしてまで練習することはありません。

必ず睡眠時間は確保するようにしています。

 

 

―可児選手が世界で戦っていく中で、やはり旦那さんのサポートというのは大きいのではないでしょうか?

私も娘も主人のサポートなしには活躍できません。

トレーニング計画から栄養面やセルフケアまで全面的にサポートしてもらっています。

時には寝る間も惜しんでトレーニング計画を練ってくれたり、親身になってサポートしてくれます。

主人は東京の有名な先生から整体を学んできました。

身体はすごく緩みますし、大抵の不調は改善してしまいます。

整体は毎週受けていて記録を伸ばしていくために絶対不可欠です。

常に良い状態で練習できているので、私はいままで大きなケガをしたことがありません。

 

 

―今日の練習を見学していて娘さんの遥さんの練習量と強さにびっくりさせられました。将来は遥さんが可児選手のライバルになっていくかもしれませんね。

娘は中学3年で(48kg級)スクワット120kg挙げるのが目標です。スクワットは高校生にもなると抜かれるかもしれないですね。

将来的には150kg以上挙げて欲しいです。

私は技術や経験でカバーしていけるようにしてスクワット以外は抜かれないようにがんばります。

 

 

―可児選手にとってパワーリフティングの魅力とはどういったところだと感じますか?

やはりがんばった分だけ記録が伸びていくところですね。

アンチエイジングにもなりますし、老若男女誰でも自分のペースで挑戦できるところでしょうか。

パワー界のマスターズ選手達は生き生きと目が輝いて本当にかっこいいと思います。

私もこの競技をずっと続けていきたいと思います。

どこまで記録を伸ばし続けられるか?自分への挑戦です。

 

 

―フェニックスジムの営業スタイルについて教えてください

当ジムはアスリート向けのトレーニングが主体になります。

筋肉をつけたい!圧倒的なパワーをつけたい!足を速くしたい!ジャンプ力をつけたい!瞬発力やスピードをつけたい!

単なる見せ筋作りでなく、クイックリフト、プライオメトリクス、アジリティトレーニングを取り入れ動ける身体作りを目指します。

もちろんパワーリフターのフォーム修正やメニュー作成もお任せください。

フェニックスジムは全国や世界で活躍するアスリートの育成を目指しています。

継続して行うことで運動の苦手な人でも必ず足が速くなり、瞬発力がつきます。

整体も併せて受けることが可能なので、不調の改善やけがの予防にもつながります

可児遥選手の一例 立ち幅跳び137cm(小学5年4月)⇒220cm(中学1年4月) 220cmは高校2年の男子並の数字です

50m走  10秒5(小学5年4月)⇒7秒95(中学1年4月)  週2回 計3時間ほどの陸上トレーニングに加え、BIG3、クイックリフト、プライオメトリクス、体幹トレーニングを行った結果です。

小学5年時には全国平均より1秒以上遅かったタイムが中学1年時には全国平均より1.15秒速くなりました。

―今日はありがとうございました!世界クラシックパワーでの活躍を期待しています!

 

【フェニックスジム紹介】

《住所》

岐阜県可児市下恵土305

《営業時間》

平日 17時~23時
土・日・祝日 11時~23時
休日 不定休

《連絡先》

phoenix@poprint.net

090-6579-7794

 

フェニックジムオーナー    可児暢也  プロフィール

学生時代ロードウォリアーズの圧倒的な肉体とパワーとに憧れる。
28歳でウエイトトレーニングを始めトレーニング歴8年、パワーリフティング歴4年

第19回ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会
93kg級7位
紀の国わかやま国体公開競技パワーリフティング
93kg級13位

日本体育協会パワーリフティング公認指導員
日本体育協会スポーツリーダー
日本パワーリフティング協会公認3級審判員
岐阜県パワーリフティング協会理事
一般社団法人レッシュプロジェクト プレイヤー級トレーナー
アクティブケアコンサルティング認定整体師

 

ジムはビジターとパーソナルトレーニング(すべて予約制)になります。

ビジター  

1,000円

パーソナルトレーニング  

60分  5,000円

120分 8,000円

高校生以下はパーソナル  1,000円引き

整体+パーソナルトレーニング(このコースは時間は自由に調節可能です トレーニング中心の方は整体20分トレーニング40分 整体をメインで受けたい方は整体40分トレーニング20分など)

計60分  6,000円

計120分  9,000円

 

《外観》

写真5

写真6

 

《設備》

パワーラインの競技用ラックとパワーラック

写真7

デッドリフトやクリーンを行えるプラットフォーム

写真8

マシン類

写真9

写真の設備に加えてバーベルシャフトはエレイコ、イヴァンコ、ブルのパワーリフティング用シャフトに、ウエサカの女子用ウェイトリフティングシャフトと各種競技用が揃っています。

今回私はスクワットとベンチプレスをやらせて頂きましたが、パワーリフティングの練習に必要な設備は全て揃った最高の環境だと感じました。

自宅にこれだけの設備のジムがあるのも可児選手の強さの一因ではないでしょうか。

練習の後に可児さんご夫婦と記念撮影させて頂きました、今回はありがとうございました!

写真10

2016年世界クラシックパワーリフティング選手権は、アメリカのテキサス州キリーンで6/19〜6/26の日程で開催され、日本からもジュニア・一般・マスターズ合わせて53人(男子36人女子17人)という過去最大規模の選手団が参加します。

エントリーと中継はこちらのHPからご覧になれます。

エントリー

男子

女子

動画中継

 

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コラム用メールアドレス: column@sbdapparel.jp

※どのコラム宛かを明記してください。
※お送りいただいたメールの内容は、コラムで取り上げられる事があります。

 

■コラム執筆者

神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット240kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位

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