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エブリベンチプレス 実践編

皆さんこんにちは。暑い夏がやってきましたが、バテずにトレーニング出来ておりますでしょうか。

今回のコラムですが、前回予告したようにエブリベンチ実践編をお送りしたいと思います。
前回のコラムではジムに行くことが大事だとお伝えしましたが、実際に時間を捻出するには大変な部分もあるかと思います。

ですがこのコラムを見て、エブリンベンチを実践するために行うべき事がより具体的に分かってくると、自ら進んで時間を作りたくなるようになっていただけると思います。
もしそうなっていただければ嬉しく思います。

では、前回のコラムの内容に沿った形で説明をさせていただきたいと思います。

まだ読んでいない方はぜひ前回のコラムを見直してくださいね!

バリエーションについて

A. 5×5ルーティン

自分にとって現在のメインとなるこのトレーニングでは、月曜日と木曜日、時間にして合計1時間ほど割いています。
5×5ルーティンの具体的なやり方については SBDコラム第1回目の、神野選手の記事を参考にしてください。

【5×5ルーティンのセットを実践する際のポイント】

例えば、私は先日、下記の重量で5×5ルーティンを行いました。

1セット目 125kgx5

2セット目 135kgx5

3セット目 145kgx5

4セット目 155kgx5

5セット目 165kgx5

これらのセットを実践する際、重要なのは挙上スピード・リズム・身体の使うポイントを常に一定にするということです。

【挙上スピード・リズム・身体の使うポイント】

通常、高重量ほど動作時にスピードが無くなり、低重量であればスピーディに挙上してしまうかと思いますが、スピードによって主働筋・補助筋の使い方はかなり変わってきます。
メインとして使う主働筋と、支えとして使う補助筋の役割を完全に理解することが非常に重要となります。
理解した上で、ラックアウト~一連の動作をスムーズに行うことを心がけます。

ただし、動作にメリハリは失わないように。
あまりにも強弱がありすぎるのも問題ですが、精彩を欠く動作になると出力もおちてきますので、メリハリのある動作を行うようにします。

【トレーニングにあたっての意識】

胸のトレーニング、腕のトレーニングという意識は捨ててしまっても良いです。
とにかく運動をスムーズかつ一定に行うようにトライしてください。

B.グリップ幅、速度変化のベンチプレス

グリップ幅や速度変化を加えるとどうなるのか、皆さんは体験的にご存じではないでしょうか?
例えばナローグリップにすると腕が太くなる、速度をゆっくりにすると胸に効いてくる・・・などなど、試したことがあるという方も多いかと思います。
トレーニング的観点から観ると正解ですし、現状打破のためにも効果的な場合も多いです。

自分もそのようにして成長していた時期があります。
これから先、もしかしたらもう一度その観点からのトレーニングも必要になる可能性も高いと思います。
ただ、今回のコラムでは違う観点から観ていきます。

【グリップ幅】

まず、グリップ幅ですが、一般的にナロー(ここでは81cmラインに小指、もしくはもう1cmほど内側としま す。)だと運動量が増えるので敬遠されがちです。
ただ、動きやすさ、体幹の意識、フォームの組みやすさなど、メリットも数多く存在します。
81cmライン人差し指が当たり前になっていて、割と早い段階でワイドグリップに移行する方が多いですが、前述の5×5ルーティンの序盤だけでもナローにしてやると身体の動き、運動の連鎖がとても上手になるので試してみてください。
肩甲骨、上腕骨、橈骨の動きのつながりはワイドよりはるかに分かりやすいです。
ちなみに、導入してしばらくはかなり筋肉痛になる場合もありますが、その他のトレーニングのボリュームを減らしてでも続けるべきだと感じています。

【速度変化】

続いて速度変化ですが、例えば100kg10回だとしたら5回ずつで速度を変化させて、同一セット内で行うようにしてください。使う筋肉が変わるのを感じることが出来ると思います。
ただし、フォームは変わらないようにすること、降ろしと挙上のスピードを一定にすること。これがとても大事です。

速いレップでは、主働筋をたくさん使います。胸や腕や肩など、比較的大きくて意識の向きやすい筋群です。
遅いレップでは、補助筋をたくさん使います。広背筋や菱形筋、大腿など、サポート側で影の支えです。 どちらもベンチプレスをするにあたって重要なのですが、特に補助筋がないがしろにされがちですので、そこを意図的に使えるようになることが鍵です。

主働筋をいかに温存できるかが、超高重量のベンチプレスを成功させられるかどうかの分かれ道になるかと思います。

C. バンドやチェーンを用いた荷重変化

Bパターンに類似しますが、バンドやチェーンは基本的にトップが重く、ボトムが軽いですね。
つまり、トップ で使う筋肉とボトムで使う筋肉は違うということです。

ここが理解できていないと、単なる力任せなこじり挙げになってしまうので注意してください。
(私が2014年度のジャパンクラシックで197.5㎏で止まってしまったのはこれが原因だと思っています。)

いかに降ろしから挙上へ使う筋肉を移行させて重量を受け渡しするのか。
バンドの張力やチェーンの負荷でそこが明確に出ますので、ぜひポイントを絞って使用してください。

逆に言えば、バンドを競技的な観点から観てうまく使えないときは胸や腕にとても効きますので、方法を変えることでボディメイクにもつながります。一石二鳥!
B・Cパターンを同じ日に行っても良いですし、30分ずつ曜日を分けて行っても良いですね。

 D.伸張反射トレーニング

ダイナミックな動作が基本となるこのトレーニングでは、重量設定をごく軽くして行うこととなります。

20%~30%1RMで 15~20回程度の設定で導入すると良いでしょう。

筋肉の伸縮を利用して素早い動作となりますが、 降ろす時に完全に脱力してしまうと怪我のもととなりますので、初期の段階では、降ろしはゆっくりと行い、半分を過ぎたところから背中に向かって加速させ、切り返しの寸前、コンマ1秒前のイメージで押し上げる方向に力を入れます。

切り替えし寸前で行うようにイメージすることで、身体の前面(胸・腕・肩)で行ういわゆるボディビル的ベンチプレスよりも、拮抗筋や下半身でバーベル全体を操作するイメージがきちんと入りますし、より早い動作になってきます。

切り返しのタイミングをつかむ際には、上記のようなイメージで行いますが、実際の切り返しのときはバーが胸に当たるようにしてください。
胸に当てて弾ませるわけではないのでご注意を。
胸でボンボン弾んでしまっているのは切り返しのタイミングが遅すぎます。
次のレップに移る際は、切り返した後、トップできっちり差し切る寸前に、今度は上から下に向かってバーを引いてくるようにしてみてください。

伸張反射トレーニングはすべての曜日で最後に行っても良いですし、負荷が小さいのでウォームアップとして初めに入れるのも良いでしょう。

E.長く止める試合形式

準備するものはタイマー×2です。ひとつは10秒、もうひとつは3秒~5秒に設定します。それから補助者が必要となります。
まず、ラックアップしたら10秒のタイマーをスタートします。
ラックアップした後のホールドで10秒タイマーが鳴ったらゆっくりと降ろしていきます。

胸に触れたところで3秒ないし5秒のタイマーをスタートし、アラームがなると同時に一気に爆発的に挙げていきましょう。
ただし、試合形式ですので頭、ヒップ、足裏などには細心の注意を払います。

特に下で止まっている間は自分の身体の隅々まで観察するようなつもりで行ってください。
意外とプレスコールを待つ間は、疎かになりがちな部分が見えてきますので、よく自分を観察しましょう。

重量の設定は8RM程度の重量x3レップ、もしくは5RMx1レップから始めて、慣れてきたら徐々に重くしていき、最終的には 95% 1RMで出来るようになりましょう!
その重量が試合の時には第一試技重量として、自信を持って設定できます。
ちなみに、2015年近畿ベンチプレス選手権において自己ベスト200kgからのスタートが切れたのも、練習段階で200kgを3秒止めに成功しているからです。

ボディメイキングでも、コンセントリック、エキセントリック、アイソメトリック運動のすべてを兼ね備えますのでオススメします。
試合前2~4週間はEパターンをメインの日としても良いでしょう。
普段であれば、Aパターン(5×5ルーティン)の後に、Aパターンの1セット目もしくは3セット目の重量設定でEパターンを3セット程度入れるのが良いと思います。

F.FUNベンチ

1週間の最後のトレーニング日に入れます。
どのような設定でも良い予備日的存在ですが、全てをやりきった週であれば、自分の場合は高重量にチャレンジする日でもあります。
疲労が溜まりまくった状態で高重量を行うのはある程度慣れが必要ですし、怪我をするリスクも負うのですが、一番動作としては洗練されている日なので敢えて入れるようにしています。

高重量以外でも、ハイレップで軽く流して血流を良くしても良いですし、フォームチェックなどに充てても良いでしょう。とにかく楽しみな1日です!

以上、長文となりましたがいかがでしたでしょうか?
様々なバリエーションを用意しつつ、混乱しないように試行錯誤しながら取り入れてみてください。
次回は、SBDエルボースリーブ・リストラップ(フレキシブルタイプ)のレビューとともに、補助種目について 言及していきたいと思います。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。

■コラム執筆者

鈴木佑輔

長野県パワーリフティング協会副理事長

所属 B.A.D.

http://www.bodyartdesign.net/

ジャパンクラシックベンチプレス選手権5連覇

2010年~2015年

2014年アジア・オセアニア選手権MVP

66㎏級ベンチプレス ベスト記録 190.5㎏

日本記録・アジア記録保持

74㎏級ベンチプレス ベスト記録 212㎏

アジア記録保持

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