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第57回関西学生ボディビル・フィジーク選手権大会レビュー (学生達と一緒に作るコンテスト)

みなさんいつもご覧いただき有り難うございます。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
一雨毎に涼しくなり秋色の候といった感じですが如何お過ごしでしょうか?
私はと言いますと、この少し涼しくなってきたタイミングでちょうど通勤定期が切れてしまい、駅の駐輪場の契約更新のタイミングなども考えて、新たに定期を購入するまでの2週間のギャップの間に自転車で通勤してみました。なかなかこれが良いトレーニングになるものでして、自宅から職場までは片道17~18kmといった距離なのですが、自宅も職場も丘の上に位置しているため、行きも帰りも最後に長い上り坂が待ち構えています。なんやかんやで1時間弱走った最後に現れるこの坂が大腿部と心臓に負荷をかけてくれるので、職場でも自宅でも到着時は呼吸が乱れ汗は滝のようです。
当然大腿部に負荷をかけるのは嬉しい悲鳴なのですが、あまりにも負荷が強すぎると脚トレに影響にしてしまうので、そこだけが玉に瑕です。そんな会話をジムでしていると元競輪選手の会員さんが坂道でのペダルの踏み方を教えてくれました。ポイントは主に身体の倒し方とペダルを踏む(まわす)時の力を入れるタイミングなのですが、言われた通りやってみると今までパンパンに張っていた大腿部の中央部より先の方にはあまり負荷がかからず臀部や股関節の付け根部分に負荷がかかるようになり、より効率的に強く坂を駆け上がる事が出来るようになりました。「餅は餅屋」と言いますが、やはり何でも専門家に習うのが一番なのだと身をもって感じた出来事でした。
 さてそんなチャリ通に目覚めた9月ではありましたが先月に引き続き、私が関わっている選手達が色んな大会で活躍してくれましたので今月もまずはその報告からはじめさせて頂きます。

【春の関西学生パワーリフティング選手権】

まずは私が監督を務めます学生S&Cコーチを育成するクラブである「関西大学学生S&C」の学生コーチたちが8月28日に岡山大学で開催された
第57回春季関西学生パワーリフティング選手権大会
に出場しました。
これは関西学連の中では「ハルカン」と呼ばれている大会で、本来であれば4月~7月の大学の春学期のうちに開催されるはずの大会ですが、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で延び延びになり今回は8月末の開催となりました。因みに関西学連が主催する大会でいうと、この春の関西学生パワーリフティング選手権「ハルカン」と秋の関西学生パワーリフティング選手権「アキカン」、そして新人戦と3つの大会があります。これに全日本学生パワーリフティング選手権大会「全カレ?インカレ?」を加えた4大会が関西学連に所属する選手の主な大会となります。
※これに加えてジャパンクラシックジュニアや国体などJPAが主催する大会にも多くの選手が参加しています。

そんなハルカンでしたが関西大学S&C所属選手達は



優勝が2人、準優勝が1人、3位が3人と健闘してくれました。その他にもボディビルやフィジークで減量中にもかかわらず出場してくれた選手や初出場でルールもよく分からないのに挑戦してくれた選手など、みんなそれぞれの目標に向かって頑張ってくれました。
残念ながら直前にコロナに感染してしまったり濃厚接触者となり出場できなかった選手もいましたが次のアキカンでこの悔しさをはらしてくれると思います。

【栃木県国体パワーリフティング】

次に9月17日~19日に開催された
いちご一会とちぎ国体のパワーリフティング競技の成年男子74kg級
に関西大学S&CのOBで私が代表を務めますKUSC所属の藤井崇彰が出場しました。

残念ながら結果は10位でしたので入賞することは出来ませんでしたが、大阪・近畿の代表として非常にハイレベルな戦いの中で大きく成長する事が出来ました。

【関西ボディビル選手権大会・西日本ボディビル選手権・ジャパンオープンボディビル選手権】

続いてボディビルに移りますが、私がポージングやコンディション作りをサポートしているZIPスポーツクラブ所属の沖田大輝が8月28日に兵庫県神戸市で開催された
第49回関西男子ボディビル選手権大会に出場し3位に入賞しました。

沖田選手はこの前週のMR大阪で4位という結果でしたが、1週間で約2kgほど絞り
MR大阪で沖田選手よりも上位にいた選手を2人かわしての価値ある3位でした。
沖田選手はその翌々週の9月11日に香川県で開催された西日本ボディビル選手権大会にも出場し12位という結果でした。今シーズンは調整が遅れ、コンディション作りに苦労したシーズンでしたが、苦しみながら試行錯誤を重ね、複数のコンテストに出続けたお陰で、来年以降に課題を解決するための大きな気づきを得た価値あるシーズンであったと思います。

また8月21日に日本クラス別の80kg級で準優勝していた村上勝英が9月4日に石川県で開催されたジャパンオープンボディビル選手権大会に出場し4位に入賞しました。

2019年に同じ大会で準優勝をしていることから今年は優勝を狙って出場しましたが残念な結果となってしまいました。
しかし課題が明確になったので1ヶ月間ゆっくり対策を練って、10月9日にメルパルク大阪で開催される日本選手権に出場します。

【オールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2022】

最後に、こちらも先月もご紹介した関西大学学生S&CのOGの国田海月さんが8月のオールジャパンジュニアフィットネスチャンピオンシップス、ビキニフィットネス優勝に続き
9月19日に神奈川県茅ケ崎市で行われたオールジャパンフィットネスチャンピオンシップス2022、ビキニフィットネス158cmクラスに挑戦しました。

非常にハイレベルなコンテストにおいて40人から12人に絞るという厳しい予選を見事に通過し、最終的には10位という結果でした。
※実際には12名ではなく15名が予選を通過することになりました。
残念ながら入賞することはかないませんでしたがシニアの日本トップレベルのコンテストでの予選通過は大きな成果であると私は思います。
次は2週間後のJBBFフィットネスジャパン・グランドチャンピオンシップス2022ビキニフィットネスに出場します。
また国田さんは10月18日より韓国で行われるワールドチャンピオンシップスへビキニフィットネス・ジュニアカテゴリーの日本代表として派遣されることが決まっており、関西大学学生S&CのOGとして初の世界大会へ挑みます。初の夢舞台を思いっきり楽しんでもらえるよう私も最後までサポートしようと思います。

【第57回関西学生ボディビル選手権大会・第3回関西学生フィジーク選手権大会レビュー】

さてこのように8月下旬から9月下旬まで様々な大会に選手達が出場し活躍してくれたわけですが、今月のコラムではその中でも我々関西大学S&Cが所属する関西学生ボディビル連盟が主催する大会である「第57回関西学生ボディビル選手権大会・第3回関西学生フィジーク選手権大会」について紹介したいと思います。

この大会は関西学生ボディビル連盟が主催する唯一の大会で
※過去には1~2年生のみが出場する新人戦なども実施していたと聞いていますが現在はこの大会のみです。
10月2日に東京都福生市で行われる全日本学生選手権大会へのクオリファイを賭けた大会でもあります。
昨年度の大会は岡山県にて開催しましたが、今年は大阪ボディビル・フィットネス連盟と連携して大阪で開催することとしました。
関西学生ボディビル連盟は現在近畿圏の大学だけで無く中国四国地方の大学も加盟しているため

※大阪府にメインキャンパスのある加盟大学:関西大学、阪南大学
※京都府にメインキャンパスのある加盟大学:京都先端科学大学
※岡山県にメインキャンパスのある加盟大学:岡山大学、岡山商科大学
※広島県にメインキャンパスのある加盟大学:広島大学
※愛媛県にメインキャンパスのある加盟大学:松山大学

行き帰りの交通の便を考えると会場は出来るだけ新大阪駅や伊丹空港から近い場所がよいのではないかと考え、大阪市内北部周辺から探していったところ西淀川区の西淀川マルモット区民ホールというJR塚本駅あるいは御幣島駅が最寄りのホールを予約することが出来たのでそちらに決めました。
こちらのホールは大阪ボディビル・フィットネス連盟に所属するジャングルジムSPORTSのジムコン(KING OF JUNGLE)でも以前使用されていたことからボディビルコンテストに理解があり設営などがスムーズに運ぶと予想しました。
大会の開始時間は中国四国地方から来られる選手の移動時間も考慮し13時からの開催としました。
学連は半期毎に選手登録を行うため、出場資格は2022年度後期の関西学生ボディビル・パワーリフティング連盟に加盟済の選手のみとなります。そしてアンチドーピング講習会を受講していることも条件となります。

この大会にはビーレジェンドプロテインでお馴染みの株式会社リアルスタイル様と競技用のアクセサリーでお馴染みの猫とダンベル様より入賞者への副賞などの協賛を頂いております。

近年では全日本学生ボディビル・フィジーク選手権では入場料がかかるようになったようですが関西学生はいまだに入場無料です。

審査規定や競技規定は全てJBBFの規定に準じて行われ、カラーリングについてもJBBFと同じ基準ですので。JBBF公認ボディカラ-リングサロンでの施術(色名 ジャマイカン・ブラジリアン)、JBBF公認セルフタンニングローション コンテストブラック(NURBS社製)は前日までの使用に限って可、大会当日は一切塗り物禁止です。
大会当日の審査員によるカラーリングチェック時で色落ちが認められた場合や、着用ウェアーにオイル・ カラー類が付着している場合、部分的であっても洗い流しが不十分だと判断した場合、失格となる場合があります。
当然会場内へのカラーやオイルの持ち込みも禁止です。

私が現役の頃はカラーリングは無しでしたので学生選手はみんな極限まで黒く焼いてくるものでしたが今はこのカラーリングが認められるようになっていますので逆に天然や日サロで極限まで焼いてくる選手は少なくなったのかなと思いました。

では前置きはこのぐらいにしてコンテストのレビューに進みましょう。

【ボディビル】

ボディビル部門は今回で57回目となる歴史のある大会です。
出場者は11名と非常に少なく寂しいところですがレベルは非常に高い少数精鋭の大会となりました。
参加選手が11人と少なかったことからいわゆる予選審査で6名に絞るということはせずに、全員がフリーポーズ、ポーズダウンまで行うことが出来るように全員で順位付け審査を行うところから始めました。
最初のラインナップから目を引いた選手は昨年全日本を制した阪南大学4年生の宇佐美選手、そしてバランスの良い筋肉で目を引いた広島大学3年生の中川選手、昨年この大会で2位となり全日本でも10位となっている岡山大学4年生の松井選手、荒削りながら上半身の筋肉量が魅力の阪南大学1年生の愛甲選手などでした。
また仕上がりで群を抜く岡山大学3年生の赤川選手がバルクで勝るこの上位陣に対してどこまで食い込めるのかも注目のポイントでした。

結果的にはフルマークで1位を獲得した宇佐美選手が堂々の2連覇を果たし部分賞も腹の部以外は全て獲得するという圧勝に終わりました。フロントポーズやサイドポーズでは中川、松井、愛甲の3選手も戦うことが出来ていましたが、やはりバックポーズの完成度と厚みで大きく差が開いてしまった印象を受けました。
ただ2位となった中川選手もプロポーションに富んだ素晴らしい選手で、ステージングも堂々としてボディビルダーとしての完成度の高い将来性のある選手でした。まだ3年生ということもあり来年がとても楽しみです。3位となった松井選手も若干仕上がりが甘かったようですが全日本までに調整を進めれば十分上位に進出する力を持っているように見えました。4位となった愛甲選手はまだ1年生です。まだまだ舞台慣れしていないところがありポージングもかなり癖があるのですが、それでも将来性は素晴らしいものを持っていると感じました。来年以降の関西学連の中心選手へ育ってくれると期待しています。部分賞で腹の部を獲得し宇佐美選手のパーフェクト勝利を阻止した形となった赤川選手は5位、筋肉量では上位4名には劣りますが「これぞ学生ボディビル」という気合の絞りで会場を沸かせました。

出場者数が少なく盛り上がりが心配されたボディビル部門でしたが台風が迫る中、岡山からバスを貸し切り大人数で応援に来てくれた岡山大学が盛大な拍手でしっかり盛り上げてくれるなど、参加する人も見ている人もみんなで楽しむ学連らしい大会となりました。

【フィジーク】

フィジーク部門は今回で3回目となる新しい大会ですが、ボディビルとは違い比較的筋肉量の少ない下級生でも「サーフパンツの似合うカッコいい身体」で参加できるという心理的な参入障壁の低さから学連の大会でも参加者はボディビルよりも多くなる傾向にあります。
それでも今大会の出場者は13名、「1日で終わるかわからないですよ~」と言われるほどの人数が出場している関東に比べると非常に少ない人数です。
しかしこちらもボディビル同様、出場選手のレベルは非常に高く最後まで誰が勝つかわからないハイレベルな戦いとなりました。
フィジークはボディビルと違いポージングもフロント・両サイド・バックの4ポーズしかありません。それだけに筋肉量だけでなく全体に筋肉の付き方、バランス、プロポーション、立ち方、パンツの着こなし、笑顔などなど何か一つが優れているというよりはトータルパッケージで評価される傾向にあります。
そんななか上位争いはボディビル部門でも上位に進出した岡山大学3年生の赤川選手、そして1年生の森東選手、また関西大学2年生の竹中選手と同じく関西大学2年の浅田選手、そして関西大学1年生の大月選手、岡山商科大学3年生の高橋選手、阪南大学1年生の愛甲選手などであると思われました。

しっかり絞れていてプロポーションが良い赤川選手を軸に見ていくのか?それとも筋肉量の豊富な愛甲選手を軸に見ていくのか?胸・肩・腕・腹筋がバランス良く発達しフィジークらしい身体をしている高橋選手か?
私もフィジークが専門ではないため審査のポイントを予想するのが難しいところでしたが結果的に上位に呼ばれていたのは赤川選手、大月選手、高橋選手でした。
愛甲選手は筋肉量ではダントツでしたがポージングに癖があり非常に勿体ないという印象でした。しかし社会人の大会など周りの選手ももっと筋肉量のある選手が揃う大会では逆にこの中では愛甲選手が最も上位に評価される可能性もあるのではないかとも思いました。あるいはカテゴリーがマスキュラーフィジークであれば彼が優勝だったのかも知れませんが、今回は相対的に評価した結果6位という結果に終わりました。
5位はプロポーションの良い関西大学2年生の竹中選手、4位は接戦でしたが丸みのある肩幅と腹筋の奇麗な岡山大学1年の森東選手、3位には大きな大胸筋の目立った岡山商科大学3年の高橋選手、2位は堀の深い腹筋と大きな三角筋を持つ関西大学1年生の大月選手、そして優勝はダントツに仕上がっていた岡山大学3年生の赤川選手でした。

今大会で上位に進出した選手のうちボディビルでは上位5名が、フィジークでは上位6名が全日本学生選手権へ進出します。
参加人数や加盟校では関東に劣るかも知れませんが上位選手のレベルは全く劣っていないと思いますので全国大会では関西勢の躍進を期待しております。

また今大会は大阪ボディビル・フィットネス連盟が主催する関西高校ボディビル・フィジーク選手権との共同開催となりました。近年では高校生大会で活躍した選手がその後、学連やJBBFの全日本ジュニアで活躍するというケースも多く見受けられます。この大会を機に「あぁ大学でもボディビル・フィジークを続けてみよう」と思っていただければ幸いです。

最後に台風が接近する中、大会にかかわってくださった関係者の皆様、応援に来てくださった皆様、参加してくださった選手の皆さん、本当にありがとうございました。
来年は今年以上に盛り上がる大会を学生たちと共に作っていこうと思いますので楽しみにしていてください。

文:佐名木宗貴


ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位

ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年    全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年    日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年    関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター

資格
・日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
・NSCA認定 CSCS
・日本パワーリフティング協会公認2級審判員

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