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ボディメイクのための分割法 (回復力と生活スタイルに合わせて考える)

みなさんこんにちは。
今月もご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。

今年もあっという間に年の瀬が来てしまったという感じですが皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

歳を重ねる毎に1年が短く感じるとよく言いますが、確かに10代・20代・30代の頃と振り返ると最近は1年1年が短く感じるように私も思います。

恐らく若い頃はやりたい事もやるべき事も沢山あり、多くの新しい事を経験しながら脳に新鮮な刺激を与え続けインプットする作業が多かったことから、年の瀬に1年を振り返っても思い出す事が沢山あるので1年を長かったと感じたのかも知れません。

逆に今は既に知っている事が増え、新たに知ろうとする事も減ったため新鮮な刺激を脳に与え続けている訳では無いので、結果的に1年を振り返っても思い出に残るような事が少なく短かったように感じるのかも知れません。

特にこの2年間はコロナの関係で公私共にイベントも少なく同じような毎日を繰り返しているからかも知れませんね。
2022年はまた新しい事にチャレンジし、新鮮な刺激を脳と筋肉に与え続ける1年にしようと思います。

大阪ベンチプレス選手権大会

さてそんなイベントの減ったコロナ禍ではありますが、先月のコラムでご紹介させていただいた関西学生パワーリフティング選手権大会の翌週に大阪府の岸和田市で行われた大阪ベンチプレス選手権大会に私が監督を務めます関西大学学生S&Cから8名の選手が出場し、同じく私が代表を務めますJPA加盟団体の関西大学S&Cからも1名の選手が出場しました。

今回も一人一人紹介したいところではありますが、文量が多くなってしまいますので割愛させていただきます。

結果5人が優勝し4人が準優勝、優秀選手賞1人、敢闘賞1人でした。
因みに今回私は、審判業務は無く男子の全階級・全カテゴリーの検量を担当し、ひたすら体重を測定し…第一試技の重量を聞き…ラックの高さを聞き…パンフレットと試技カードを渡す一日でした。

今回の会場であった岸和田市総合体育館の多目的室は会場がコンパクトでベンチプレスのみの試合という事もあり搬入や搬出もいつもより楽でしたが翌日には体重が約1kg減っていたのでダイエット中の私としてはとても得した気分でした。
ついでにダイエットの経過もご報告すると

先月のコラムでもご報告した通り予定されていた東京や長野への出張の影響もあり若干停滞しましたが、その後また進みだし年内目標の89.2kgも既に超えて88kg台へ到達しました。このコラムを書いているのは12月中旬ですが下旬にはいよいよ北海道への出張がありますのでそこを太らずなんとかキープで乗り切れるかが2021年最後の課題となります。

ボディメイクのための分割法

そんな出張の繰り返しと戦いながらのダイエットですが、肝心要のトレーニングの方も、ここまでは何とか全身を3分割で週4回というサイクルを死守する事が出来ています。
そこで今月はボディメイクのためのトレーニングに必要な分割法について私が考えるお勧めの分割法をいくつかご紹介しようと思います。

【2分割】

最初に紹介するのは至ってシンプルではありますが、実は競技アスリートのトレーニングとしてはよく利用する方法で、全身を2つに分割し週4~6回トレーニングする方法です。

分割例として私が考えるのは2パターンで一つ目は簡単に上半身と下半身で分ける方法、そしてもう一つは身体の前面と背面で分ける方法です。

トレーニング種目例としては
①上半身(胸・背・肩・三頭・二頭・腹)
ベンチプレス、チンアップ、ショルダープレス、トライセップスエクステンション、アームカール、クランチ
下半身(臀部・大腿四頭筋・ハムストリングス・カーフ)
スクワット、ランジ、ルーマニアンデッドリフト、カーフレイズ

②前面(胸・三角筋前部・中部・二頭・大腿四頭筋・腹)
ベンチプレス、レッグプレス、ショルダープレス、アームカール、レッグレイズ

背面(背・臀部・ハムストリングス・肩後・三頭・カーフ)
ベントオーバーロウ、ルーマニアンデッドリフト、リアレイズ、シュラグ、トライセップスエクステンション、カーフレイズ

このようになります。
この分割の利点はなんと言っても1回で多くの筋群を刺激する事が出来るので、同じ筋肉を高頻度で刺激し成長の機会を多く作る事が出来ます。

逆に欠点は1回で沢山の部位をトレーニングするため1回のトレーニング時間が長くなってしまう事です。また上級者になると1回1回のトレーニング強度も高くなることから、しっかりとリカバリーをしないと回復が追い付かなくなる可能性もあります。

そのためこのような分割でトレーニングをする事をお勧めするのは初心者の方やご高齢の方など、1回1回のトレーニングで大きな刺激を身体に与えるのではなく小さな刺激を何回も与える方がメリットがある方だと思います。

私もトレーニングを始めた最初の1年ぐらいは2分割で週6回、全身を週に3回ずつ刺激するぐらいのトレーニングを続ければ良かったなど今では考えています。
その場合は当然3回とも同じ種目を選択するのではなく例えば胸だったら
月:バーベルベンチプレス
水:インクラインダンベルプレス
金:ディップス
というように刺激に変化を持たせながら行うと良いと思います。

【3分割】

私の経験上、回復力がある人は3分割で週6回トレーニングをするのが強度と頻度を両方求める事が出来る最良の方法ではないかと考えています。

お勧めする分割は
胸・背 / 肩・腕 / 脚
でこれを週に2回まわすのですが、週の最初の方は大筋群では5~6RM程度、小筋群でも8~10RM程度の重量を使用し、逆に週の後半では大筋群で10~12RM程度、小筋群では15~20RM程度の重量を使用するようにするのが理想だと考えます。

また1日に2回トレーニングをする事が可能な人はダブルスプリットで
午前:胸 / 午後:背
午前:肩 / 午後:腕
午前:大腿四頭筋 / 午後:ハムストリングス・カーフ
としても良いと思います。

この分割のメリットは先にも記した通り回復力が適応可能であれば、高強度のトレーニングと高頻度のトレーニング、ハイボリュームのトレーニングを両立する事が出来るという点です。

デメリットは強度も頻度もボリュームも全て求めるがあまりオーバートレーニングに陥る可能性もあるという事です。

それを回避するためには頻度をコントロールする事が重要で、週6⇒5⇒4回と回復力や生活スタイルに合わせて柔軟に頻度を増減させながら進めることが重要です。

また部位の分割については
『胸・肩・三頭 / 背・二頭 / 脚』のように上半身をプッシュとプルで分けてみても良いですし、『胸・肩前中部・三頭 / 背・肩後部・僧帽筋・ハムストリングス・カーフ / 大腿四頭筋・二頭』のようにコアとなる種目で共働する筋群でまとめたり、克服したい弱点部位を考慮し各自の課題に合わせて分割を変更するのも良いと思います。

【4分割】

ここまで紹介した2分割と3分割は比較的高頻度でトレーニングを行う事を目的とした分割法と言えます。

しかし高頻度でトレーニングを行うという事は疲労の回復が間に合わず怪我やオーバートレーニングの原因となる可能性もあります。

また分割を少なくするという事は1回のトレーニングで沢山の部位を刺激しなければならないため1つの部位に対してそこまで多くの時間とセット数を割く事が出来なくなるという事でもあります。

そこで回復力があまり無かったり、1回1回のトレーニング時間があまり確保できなかったり、1回のトレーニングで1つの部位に対して集中して刺激を送りたい人は分割をさらに細かくしてトレーニングする必要があります。

4分割で私がお勧めする分け方は『胸 / 背 / 肩・腕 / 脚』ですが、肩や腕に時間を割きたい人は『胸・二頭 / 背・三頭 / 肩 / 脚』とするか『胸・肩前横 / 背・肩後 / 腕 / 脚』のようにしても良いと思います。

私も以前4分割を多用していた時期がありましたが、私の場合は背中を上下に分けたいタイプだったので『胸・肩前中 / 上背・肩後 / 大腿四頭筋・腕・カーフ / 下背・ハムストリングス』というようにしていました。

4分割の場合は週4回トレーニングすれば最低限全身を1回ずつ刺激出来るので仕事や学業が忙しくてなかなか頻度を上げられない人にとってはギリギリ死守したいラインかも知れません。

2ON-1OFF-2ON-2OFF
というサイクルでまわせば土日は家族との時間もとれるので無理なく継続する事の出来る非常に現実的なサイクルかも知れません。

【5分割】

そして更に分割を細かくすると次は5分割となります。
ここまでくると完全に1つの部位を時間とボリュームをかけてしっかり改善していくためのプログラムとなってくるので分割は『胸 / 背 / 肩 / 腕 / 脚』というようになります。

またこのような細かい分割にする人は1つ1つの部位をしっかりトレーニングしたい人だけでは無くて、逆に毎日忙しくて長いトレーニング時間は取れないけれど「毎朝30分だけなら時間がとれる」というような比較的忙しい人が全身を週1回刺激するための分割方法でもあります。

私も仕事が忙しい時は仕事が始まる前の30分や仕事が終わった後の30分、或いは家で仕事に行く前の30分など短い時間で1つの部位をひたすらトレーニングするというようなやり方をする時に用いる分割でもあります。

例えば
胸:仕事前に職場でベンチプレスを30分
背:仕事後に職場でチンニングを30分
肩:朝早めに起きて自宅でサイドレイズを30分
腕:帰宅途中にジムに立ち寄りダンベルカールとプレスダウンをスーパーセットで30分
脚:早めに起きて出勤途中にジムに立ち寄りハックスクワットを30分
と言ったように種目を限定する事でジム内の移動やプレートの付け替えなどの時間を省略しひたすらパンプに30分間耐えるようなトレーニングを行います。
このような場合に選択する種目はプレートの付け外しや片付けが簡単で自分が得意で狙った筋肉に効かせやすい種目を選択します。
またウォームアップをしっかり行う時間が無いので高重量を持つような種目は選びません。
もちろん1年中こういう方法ではあまり良い結果は出ないと思いますが、仕事の忙しい時期などは割り切って行うようにしています。

【6分割】

更に細かく分割をすると6分割となり分割例としては『胸 / 背 / 肩 / 二頭 / 三頭 / 脚』、『胸 / 上背 / 肩 / 下背 / 腕 / 脚』、『胸 / 背 / 肩 / 腕 / 大腿四頭筋 / ハムストリングス・カーフ』というようなものになります。

メリットは5分割と同じですが、デメリットはここまで細かくしてしまうと1部位あたりの頻度は週1が限界で週6回トレーニング回数がとれない場合、頻度は週1回以下となってしまいます。

ただ必ずしも週に1回は同じ部位を刺激しなければ発達しないというわけでは無いので、もう既にキャリアの長いベテラン選手などは1週間以上の間隔を開けた方が調子が良いという場合もあるのでここも回復力や生活スタイルに合わせて採用するべきかどうかを判断すると良いと思います。

私の知っているベテラン選手では1週間では無く10日間でサイクルを組んで6分割で
2ON-1OFF-2ON-1OFF-2ON-2OFF
でトレーニングをしている選手もいました。

頻度を高める事は身体を大きく成長させる段階では重要な事だと思いますが、ある程度成長した後に個々の筋肉のクオリティを高めるような段階では、より休養を重視するスタイルを取り入れる事で怪我などのリスクを回避しながらジックリと肉体改造に取り組むという考えも良いと思います。

まとめ

自分のこれまでのトレーニングキャリアを振り返ってみると、やはり若い頃は3分割ぐらいで週5~6回というのが一番効果があったように思いますが、徐々に歳を重ねる毎に分割も4~5に増え週あたりのトレーニング回数は3~4ぐらいに減ってきたように思います。
それはもちろん回復力の低下を考慮したものでもありますが、仕事での責任や家庭の状況など生活を取り巻く様々な状況に合わせて「どうすれば最良の方法でトレーニングを継続することが出来るのか」をその時その時で考えアジャストし続けてきた結果だと思います。

回復力もあり家庭も持っていなかった20代の前半にもっと高頻度でトレーニングをするべきだったなと反省もありますが、元々トレーニングを始めた切っ掛けがウエイトトレーニングを勉強し身体の仕組みを知る為だったので色んな本を読み色んな方法を自分の身体で試した結果、初心者の頃から上級者のようなやり方をし過ぎてしまったのだと思います。

私が多用した分割法の特徴は恐らく背中を上背部と下背部にわけるところでデッドリフトを必ず採用して下背部とハムストリングスを両方鍛えるという意識でトレーニングに取り組んでいました。

これはボディビルでは背面の完成度が勝敗に大きく影響するという考えで行っていたのと、私は元々ボディビルを始める前は柔道をしていて引く系の力は強かったことから自分の長所を出来る限り伸ばしたいと考えたうえでの選択でした。

そのため3分割でも
『胸・上背 / 下背・ハムストリングス・肩 / 大腿四頭筋・腕・カーフ』というような分け方でしたし、4分割でも
『胸・肩前横・二頭 / 上背・肩後・三頭 / 下背・ハムストリングス / 大腿四頭筋・カーフ』というような感じでした。

肩を前・横・後と分けるのは上背部を鍛える時に三角筋後部と僧帽筋は一緒にある程度強い刺激が入るのでまとめてやってしまおうという考えからでした。元々柔道時代から肩は痛めていたので三角筋に効く前に肩関節が痛くなってしまう事から、特に三角筋後部は背中の後で肩が温まっている状態でまとめて行ってしまいたいと考えていました。

また胸の種目ではインクラインのダンベルプレスをメインにしていたのである程度三角筋の前部にも刺激が入るので、そこもまとめてしまおうという考えもありました。

使う部位をまとめると言えば胸や背中の後に腕をトレーニングする際に押す系と引く系でまとめて胸と三頭、背中と二頭という様にまとめてしまうという考えもあるのですが、私の場合は腕が細いうえにこちらも柔道で両肘を痛めていた関係で腕のトレーニングで高重量を使う事が出来なかったので考え方としては逆で、腕には小さな刺激を高頻度で与えたいと考えていました。

そのため背中を鍛える時も意識的にリバースグリップを入れたりして間接的に二頭にも刺激が入るようにしたり、胸のためにベンチプレスをする時も最後にナロウをハイレップで行いトレーニングを仕上げるようにして三頭筋にも刺激が入るようにしていました。その代わり胸・背中の後に腕のトレーニングは入れずに別の日に腕をトレーニングするようにして実質週2~3回刺激はしているんだけれども刺激自体は怪我をするリスクの少ないレベルの強さに留めるといったイメージで分割に組み込んでいました。

またパワーリフティングとボディビルを並行していた時期はパワーリフティングの試合の1ヵ月前からは4分割で
『スクワット・ベンチプレス / 肩・腕 / OFF / デッドリフト・ベンチプレス / 肩・腕 / OFF』をひたすら繰り返すという方法で調整をしていました。

ただやはりボディビルの事が常に頭にはあったのでパワー三種をだけの日も最後のセットはハイレップスで行いパンプアップさせてから終わるなど工夫はしていました。

ここ10年はボディメイク系はあまりやらずにパワーリフティング中心のトレーニングを行ってきたわけですが、今年の9月ぐらいからはもう一度身体を作り直したくなってしまいダイエットと並行してボディメイク系のトレーニングを再開しました。

頻度は基本週4回で一時的に5回に増やしてみたものの先月のコラムでも書いた通り若干オーバートレーニング気味になってしまったので、今の自分の回復力と生活スタイルでは週4回がベストだと判断したので無理に増やそうとはせずに週4サイクルを崩さないようにしようと考えています。

それにともなう分割ですが9月以降今まではずっと3分割で行っています。
分割は『胸・背 / 肩・腕 / 脚』で行っていますので各部位の頻度は週に1.333333…回という事になります。

週4回なので4分割でも良いのですが久々にボディメイク系に切り替えたので出来る限り高頻度で全身をまわしたいので行けるところまではこのまま行こうと思います。

もしも回復が追い付かなくなれば4分割の『胸・二頭 / 背・三頭 / 肩 / 脚』を採用しようと思いますし、年が明けて今より多忙になりジムでのトレーニング時間が週3回しかとれなくなればホームトレーニング(庭)を併用して5分割を採用するかも知れません。

その場合は
ジム:胸・三頭
庭:サイドレイズ・リアレイズ
ジム:背中
庭:アームカール
ジム:脚
となるでしょう。

自分に合った分割法を考えるのはとても楽しい作業です。
最初は誰かに教えてもらったり好きな選手の真似から入って良いと思いますが最終的には自分で自分に合った方法を作り上げる事が出来ればどんな状況でも楽しくトレーニング計画が立てられるようになると思います。

皆さんも自分だけのトレーニングルーティンを作ってトレーニングを継続し理想の身体を目指しましょう。

それでは今年もお付き合いいただき有難う御座いました。
良いお年をお迎え下さい。

文:佐名木宗貴


ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位

ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年    全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年    日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年    関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター

資格
日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
NSCA認定 CSCS
日本パワーリフティング協会公認 2級審判員

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