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グリップ力を強化する

読者の皆様、いつもご覧頂き有難う御座います。

あっという間に寒くなり外に出るのが億劫な日々ですが、今日も負けずにジムへ向かいましょう。

さて今回はアスリートがついつい忘れがちな前腕部、特に掌を握る力のトレーニングについてです。

通常ウエイトトレーニングでは、身体の中心に近い大きな筋肉から先にトレーニングして、身体の末端に近い小さな筋肉は後にトレーニングするようにプログラムされます。

これは末端部の小さな筋肉を先に疲労させてしまうと中心部の大きな筋肉を鍛えるのに支障をきたす場合が多いからです。

分かりやすい例を挙げると腕の筋肉を先にトレーニングしてオールアウトさせてしまってから背中の筋肉を鍛えようと思っても、既に腕がパンパンで握力が落ちてしまい背中の筋肉を刺激するために十分な重量を持てなくなってしまいます。

このような事にならないように、中心部のトレーニングを先に、或いはより高重量を扱う複合関節種目を先に行うようにプログラムを組むと、結果的に末端の小さな筋肉のトレーニングは後回しになりがちです。

特に掌を握る力、所謂グリップ力は中心部の大きな筋肉を鍛えるためにも十分大きな負荷に耐えているケースが多く、特別なプログラムは不要であるという考えもあります。

しかし、様々なスポーツでグリップ力は非常に重要で、特に体の小さな日本人は手も小さく指も短い人が多いので通常のトレーニングに追加して鍛えなければならない場合もあると思います。

今回は少し変わった種目や、通常のトレーニングに少し工夫をしたり1~2種目追加するだけで、グリップ力を強化できるアイデアを幾つか紹介したいと思います。

【リストロール】

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まずは定番のリストロールです。グリップの位置は肩の高さで固定し、急がずゆっくりと動作を行います。

ホームセンター等で道具を揃え、自作するのも良いでしょう。

最初は2.5㎏程度から始め、重さが10㎏程度まで扱えるようになったら、今度はグリップにタオルを巻き太くするなどして握る力を強化します。

【ファーマーズウォーク】

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ストロングマンコンテストなどで御馴染の種目ですが、アスリートのトレーニングとしても非常に重要です。

姿勢を保持する事に重要な脊柱起立筋群を実践的に強化する事が出来るので、所謂コアトレーニングとしても非常に有効です。

その為にも重量に負けて猫背になったり姿勢を崩す事の無いように注意しましょう。

今回はグリップ力に特化した話ですので、しっかり握って20m程度歩ける重量から始めて徐々に重量と距離を伸ばしていきましょう。

【ピンチグリップファーマーズウォーク】

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ファーマーズウォークのバリエーションです。プレートを指先で抓みファーマーズウォークを行います。
かなり難易度の高い種目ですので最初は10kg程度から初めて、くれぐれも足の上に落とさないように注意してください。
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【フレームチンアップ】

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普通に懸垂をしても十分握力を強化する事が出来ますが、更に一工夫してパワーラックのフレーム部分に指を引っ掛けるようにして行うと更に有効です。

くれぐれも滑って落ちないように注意してください。

【ジャージチンアップ】

懸垂のバリエーションで、ラグビージャージやタオルを使った懸垂です。

柔道の選手は柔道着を引っ掛けて行う事が多いです。

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懸垂が出来ない人はTバーローイングのグリップをジャージ等にしても効果的です。
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【ロープクライム】

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言わずと知れた綱のぼりです。

レスリングや柔道では当たり前の光景ですが、他競技のアスリートは案外出来なかったりします。

公園や小学校などの、のぼり棒でも代用できるので子供の遊びとしても良いでしょう。

また、綱のぼりが出来るほどの強度はありませんが、ある程度の太さの縄をホームセンターで買ってきて重りを括り付ければ自宅の庭でロープ引きトレーニングを行う事も可能です。
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雑草も除去出来て一石二鳥です。

【リストストラップを使う事の弊害】

アスリートのトレーニングを見ていて残念なのは、簡単にリストストラップを使う選手が多いという事です。

デッドリフトやシュラグ、ベントオーバーロウで200㎏以上を握るのであれば理解できますが、自重での懸垂やマシンエクササイズ。

でリストストラップを使用してしまうと握る力が付きにくいです。

勿論ボディビルダー等は背中の筋肉を刺激する事に集中したいので腕に余計な力が入らないようにリストストラップを使った方が良い場合もあります。

しかし通常のアスリートのトレーニングではリストストラップを使わなくても出来る種目、重量の場合は出来る限り使用しないようにした方が良いでしょう。

また、私自身の経験ですが、ボディビルでコンテストに出ていた頃よりも、パワーリフティングで大会に出ていた頃よりも、バーベルを触った事も無かった中学や高校時代の方が握力も強く、前腕も太かったのです。

それは柔道をしていたからだと思います。

私は柔道選手としては力が強い方ではありませんでした、寧ろ非力で握力も弱い方でした。

綱のぼりも苦手でしたし懸垂も苦手でした。

それでも柔道をやめてからボディビルやパワーリフティングを行っているのに前腕部が細くなり、握力も弱くなっていった事から考えると、単純に繰り返し必死に強く握るという事が前腕部や握力を強化する事に有効であるという証明だと思います。

【まとめ】

手を握る力というと、格闘技やタックルなどで相手を掴むシチュエーションのあるコンタクト系球技等は必要性をイメージしやすいかも知れませんが、その他にもボールを手で扱う球技やラケットを使う種目など、道具を手で扱うスポーツでもスキルを修得するうえで必要な筋力になります。

以前アメリカンフットボールの世界選抜チームで日本人コーチが手の小さいクゥオーターバックのパススキルについて質問したところ、「セイフティに転向させろ」と答えが返ってきたという話を聞いたことがあります。

勿論競技人口の多い競技では、そのポジションに適していない体型の選手はサッサと別のポジションに転向させて、適した体型の選手をリクルートして来い!というのが正論なのでしょうが、日本のスポーツ界ではそれが出来るのは極限られたチャンピオンチームだけでしょう。

であれば我々日本人をコーチするSCコーチは「海外ではこうだ!」「世界ではこうだ!」
ではなく、日本人による日本人のためのプログラム。

小さい身体の頭の先から指先まで鍛えるような緻密なプログラムを用意し、実行させる事が出来なければならないのではないでしょうか?

こういうトレーニングのアイデアは一つの競技に特化して仕事をしているとなかなか出て来なくなってしまうので、是非オフ等を利用して他競技のアスリートのトレーニングを見に行ったり実際に体験してみると良いと思います。

 

■コラム執筆者

佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 241kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝

ボディビルディング
2000~2001年  関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年     全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年     日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年     関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

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