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パワーリフティング大会をもっと面白く華やかに!

10月に入ってすっかり涼しくなりスポーツの秋本番と言った所ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私は9月に岩手国体パワーリフティング公開競技に出場し男子93kg級で3位という結果になりました、現在は11月の愛知県大会に向けて練習を行っています。

パワーリフティングは秋の大会シーズンに入り、これから年末にかけて毎週末のように日本のどこかで大会が開催されます、更に11月26~27日にはノーギアベンチプレスの日本一を決めるジャパンクラシックベンチプレス選手権大会も控えており、今年の秋も日本各地で熱い戦いが繰り広げられる事になるのではないでしょうか。

このようなパワーリフティング大会の参加者はノーギアを中心に日本でも海外でも増加傾向にありますが、それに伴って近年は多人数の選手をいかに限られた時間内に試技させるかという問題が大きくなってきているようです。

また、大会を盛り上げる為の新しい工夫や試みも世界中で始まっています。

私は普段より海外の大きな大会は可能な限りネット中継等で見るようにしているのですが、欧米のようなパワーリフティングの盛んな地域では大会を盛り上げる為に色々と工夫が凝らされており中々興味深いです。

こういった諸外国のやり方を上手く取り入れることができれば、日本のパワーリフティング大会もより良いものに変わっていく事ができるのではないかと感じます。

大会の演出や進行について海外のやり方も積極的に取り入れ、見ても参加しても面白い大会にしていく事ができれば、現在の盛り上がりも一過性のものにならず、熱気も更に高まっていくのではないでしょうか。

今回のコラムでは、海外では大会を盛り上げる為にどういった工夫がされているのか、どうやって多人数の参加選手を効率よく試技させているのか、私が各国の大会をチェックしていて気になったものをご紹介しようと思います。

【試合会場を華やかに】

《ロゴデザインの作成と利用》

パワーリフティングの国際大会や欧米のナショナル大会では多くの場合その大会専用のロゴデザインが作られており、製作されたロゴはバックボードやポスター、メダル、Tシャツ、看板、ホームページ等にフル活用されています。

大会専用ロゴデザインがあれば大会も華やかになりますし、ロゴが使用されたメダルやTシャツのような記念品は選手にとってもきっと思い出深いものになると思います。

ロゴデザインの制作はプロに依頼する事になるのである程度の経費は覚悟しなければなりませんが、クラウドソーシングサイト等を使えば制作費用を安く抑える事も可能なようです。

経費の問題でプロの業者やデザイナーに依頼するのが難しい場合はイラスト販売サイトで数千円程度で売られているイラストを購入して使用するのもいいと思います、イラスト販売サイトのイラストは国際大会でも度々使用されているのを見かけます。

NEW START! Asia/Oceania RAW Powerlifting Championships 2015 in Tashkent, Uzbekistan. www.powerlifting-asia.com #asianpowerliftingfederation

A photo posted by Asian Powerlifting Federation (@asian.powerlifting.federation) on

猛禽類のイラストがあしらわれた2015年アジアオセアニアクラシック選手権のロゴデザイン、国際大会では大会毎にこのようなロゴデザインが作られます。

数年前にIPFに加盟したシンガポール協会のナショナル大会で使用されるロゴデザイン、このロゴは西暦の部分だけを変更して毎年繰り返し使えるようになっています。

最近は欧米だけでなくアジア各国のナショナル大会でも頻繁に専用ロゴデザインが作られているようです。

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安価で購入可能な汎用イラストの組み合わせで作られた2014年世界クラシック選手権大会のロゴデザイン、パワーリフターのシルエットやバックの炎といったイラスト販売サイトで購入できるイラストを組み合わせたものに大会名や協会・スポンサーのロゴを追加して作られています。

《バックボード》

試合会場の雰囲気に最も大きな影響を与える要素は何か、それはやはり会場の中心であるプラットフォームに設置されるバックボードではないかと私は思います。

バックボードの無いプラットフォームはどこか味気なく寂しいもので、逆に立派でデザインの良いバックボードが設置されていると会場に入った瞬間から大きくテンションが上がるという選手も多いのではないでしょうか。

海外の大会のバックボードを見ていると、デザインには大体の雛形があるようで、IPFの国際大会では、中央にIPFのロゴ、左右に公式スポンサーのロゴ、上に大会名や大会ロゴ、残りのスペースにその他のスポンサーロゴといったレイアウトが基本となっているようです。

各国のナショナル大会では様々なデザインのものが見られますが、大会名の入ったロゴデザインを中央に据え左右にスポンサーのロゴを配置したデザインが多いようです。

2016年フルギア世界ベンチのバックボード、世界大会のバックボードは基本的なデザインが共通しています。

First lift starts at 10am. Stay tuned.

A photo posted by Powerlifting (Singapore) (@powerliftingsingapore) on

大会ロゴを中心に配置したシンガポールナショナル大会のバックボード。

アメリカのアーノルドクラシックのような大きなイベントではバックボードの左右に照明や巨大なディスプレイを設置した大掛かりな舞台セットも見られます。

《照明》

北米の大会では照明にも工夫をしている事が多いようです。

パワーリフティングの大会会場は一般の体育館が多いですが、バックボードや照明を工夫すれば劇場のような空間を演出でき、大会の雰囲気も盛り上げる事ができるのではないでしょうか。

プラットフォームの選手にスポットライトを当てたアーノルドクラシックの照明。

【大会プロモーション】

欧米の大会ではホームページやSNSを活用した大会のプロモーション活動が積極的に行われています。

大会ホームページではエントリー、大会スケジュールのような基本的なものから、ルール、会場、スポンサーの紹介、更には会場近辺のレストランや観光スポットまで載っていてそれだけ見れば大会の全ての情報がわかるようになっています。

それにプロモーションビデオの制作、これも欧米では一般的なようです。

やはり経費等の問題もありますのでこれらを国内で取り入れるのは中々難しいとは思いますが、将来的にこういったものが作れるようになっていけば、競技の普及や選手達のモチベーションアップにも寄与するのではないかと考えられます。

http://www.teamrohr.com/2016-usa-powerlifting-raw-nationals/

2016年全米ノーギア選手権の大会ホームページとプロモーションビデオは、各種SNSを使って公開されています。

【多面開催の問題点と新たな試み】

《増加する多面開催》

多面開催とは複数のプラットフォームで試合を同時進行するというものです。

パワーリフティングでは参加者の増加に伴って多面開催の大会が増えており、以前は一面開催が基本だった世界大会でも近年は多面開催が行われるようになっています。

国内の大会でも今年のジャパンクラシックパワーリフティング選手権は3面開催でした、パワーリフティングでは一つのプラットフォームで1日に試技出来る人数に限りがある為、大幅なルール変更がない限り今後も益々多面開催の大会が増えていくと思われます。

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3つのプラットフォームで開催された今年のジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会。

《多面開催のデメリット》

多面開催にはまず運営の負担が増すというデメリットがあります、必要な器具やスタッフの数が増えますし会場も広い場所を準備しなければなりません。

更に、それ以外にも大きな問題として観客の注目が分散してしまうという点があります、プラットフォームが多いと観客はどこを見ていいのかわかり辛いですし、注目選手の試技が同じ時間にかぶってしまったりと、観客に見てもらうエンターテイメントとして考えても多面開催には問題が多いのではないでしょうか。

それらの問題を解決する為に海外で行われている試みをご紹介しようと思います。

《コンパクトなプラットフォームと各エリアの機能的な配置》

まず会場についてですが、限られた広さの会場で多面開催を可能にする為に、プラットフォームをコンパクトで機能的なレイアウトにするのが、狭い会場でも無理なく多面開催を可能にするのに有効と考えられます。

Final day at #usaplrawnationals2015. Tom Haifley up on platform 4 Flight A at 9am. #startingstrength

A photo posted by Westminster S&C (@westminsterstrength) on

2015年全米ノーギア選手権の写真、そこまで広い会場には見えませんでしたが一つ一つのプラットフォームを省スペースにする事で4面開催を可能にしていました。

グッドリフトの画面を映す液晶ディスプレイも場所を取らないようバックボード上部に設置されています。

ウォーミングアップや選手の控えスペースはステージの裏側に作られています。

限られたスペースを有効に使うにはこれらの各エリアの配置も重要になってきそうです。

《プライムタイムセッションという新しい試み》

前述のようにパワーリフティングを観客に見せるエンターテイメントスポーツとして考えると注目が分散する多面開催にはやはり少し問題があります。

また、他にもパワーリフティングには根本的な問題として試合時間が長過ぎるという難点があります、1階級や2階級終わらせるのに3〜4時間も掛かっていては観客はどんなに好きでも見ていて疲れてしまいます。

私も世界大会の中継を見るのは好きですが、3〜4時間のセッションが1日3回あるのを最初から最後まで見続けるのは少し辛いものがあります。

これらの問題に対応する方法として、最近アメリカではプライムタイムセッションという興味深い試合進行の方法が考案されています。

このプライムタイムセッションというのは、各階級のエントリー記録上位から数名〜十数名ずつトップ選手(プライムタイムリフター)を指定して、その選手達のセッションは一日の最後に1面で開催するというものです。

つまり、ジュニア・マスターズ・一般中位〜下位の選手達の試技は多面開催の第1第2セッションで一気に終わらせ、スター選手達のセッションは1日の最後に単面で開催し大いに盛り上げるという方法です。

このアメリカの方式を採用するなら、トップ選手達の優勝争いを見たい観客は最後のプライムタイムセッションだけ見れば多くの階級の優勝争いを一気に見られるので飽きませんし観戦も短時間で終わります、また、プライムタイムに参加出来ない大多数のリフターも自分の出番が終わった後にトップ選手の試技をゆっくり観戦する事が出来ます。

こちらのリンクは2016年全米ノーギア選手権プライムタイムセッションに選ばれたプライムタイムリフターとなります、各階級のプライムタイムリフターの数は前年度同大会の参加人数に応じ決められ、1000人を超える大会参加者の内1割程度がプライムタイムセッションに参加する事になります。

初日のプライムタイムセッションではABグループで合わせて5階級、2〜4日目も3~4階級の優勝争いが一度に観戦できますので、観客も3〜4時間ダレずに見ていられると思われます。

このプライムタイムセッションという方向はまだ始まったばかりで今後どうなるかわかりませんが、試合の進行スピードと盛り上がりを両立させる方法として今後広まっていくかもしれません。

【まとめ】

今回は海外の大会を見ていて自分が選手や観客の立場なら是非取り入れてほしいと感じたもの、それにもし大会運営に関わるようになったら積極的に取り入れてみたいと感じたものを書き連ねてみました。

海外と日本では当然諸々の条件も違いますし、これらをそのまま取り入れる事は難しいと思いますが、選手や運営が一丸になってこういった海外の方法を調べ良さそうなものを取り入れたり、少しずつ工夫を凝らし新しいアイデアを出していければ、大会も華やかになってパワーリフティングが見る側もやる側も更に楽しめる魅力的な競技になっていくのではないでしょうか。

そうなれば大会も一段と盛り上がり、競技の普及にもきっと繋がっていくと思っています。

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■コラム執筆者

神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット242.5kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位

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