SBDコラムニスト石川葵です。
今回は2026年9月に青森で開催されました「青の煌めき青森国スポ」までの取り組みと試合結果について書きましたので是非参考にしていただけると幸いです。
◆青森国スポの試合結果
まずは、試合結果から
2026 青森国スポ 準優勝
国スポ青森に出場し、スクワット280kg、ベンチプレス165kg、デッドリフト285kg、トータル730kgで準優勝という結果でした。
目標としていた記録や結果には届かなかった一方で、試合当日にアクシデントがありながらも、最後まで試技を続け、自分にできることを出し切れた大会になりました。
特にスクワットでは、第一試技で思わぬ怪我を負い、その後の試技にも大きな影響が出ました。それでも、コーチのベーコンさん、ジムオーナーのグッチさんから助言をもらいながら、その時点でできることを一つずつ考え、ベンチプレス、デッドリフトと試技を続けることができました。
今回は、そんな国スポ青森までの準備と、試合当日を振り返りたいと思います。
◆青森国スポに向けた準備の重要性
『仕事と競技の両立』
国スポ青森に向けてトレーニングを続ける中で、改めて感じたのが「仕事と競技の両立の難しさ」です。
普段から仕事とトレーニングを並行していますが、試合に向けてコンディションを仕上げていく期間になると、日々の生活そのものが競技に大きく影響することを実感します。
特に難しかったのが、睡眠時間や長時間の運転による身体へのダメージとの付き合い方でした。
仕事の都合上、どうしても十分な睡眠時間を確保できない日があったり、長時間の運転によって身体が固まってしまったりすることがあります。そうした疲労を抱えていても、基本的には決められたトレーニングメニューをこなしていく必要があります。
また、「今日はあまり気分が乗らない」という日に重いメニューが組まれていたり、反対に「今日は調子がいい」と感じる日に軽めのメニューだったりすることもあります。
自分の感覚だけを優先してメニューを変更するわけにはいきません。試合に向けたプログラムには、その時期、その重量、その内容で取り組むよう設計されているからです。
頭では分かっていても、自分のコンディションと決められたメニューをうまく噛み合わせていくことには難しさがあり、同時にもどかしさを感じる場面もありました。
だからこそ、今回の準備期間では「トレーニング以外の部分で、どれだけ自分の状態を整えられるか」ということを改めて考えるようになりました。
『セルフケアの再発見』
その中で再発見したのが、日々のセルフケアの重要性です。
今回、改めて活用し活躍したのが「骨盤職人」です。
これまでは身体の疲労や凝りが強くなったときに、整体や鍼など、外部からのケアを受けることを考えることが多くありました。
もちろん、整体や鍼はコンディショニングにおいて重要な選択肢です。ただ、今回の取り組みを通して改めて感じたのは、「身体が疲れてから外部のケアを受ける」のではなく、その前段階として自分自身でできるケアを積み重ねておくことの大切さです。
骨盤職人を使って身体をほぐしたり、ストレッチをしたり、日々の身体の状態を自分自身で確認する。
そうしたセルフケアをベースにしたうえで、必要に応じて整体や鍼などの外部からのケアを取り入れる。
当たり前のように思えることですが、競技を続けていると、いつの間にか「疲れたらケアをしてもらう」という考え方に偏ってしまうことがあります。
今回の国スポに向けた準備期間は、そうした部分を見直す良い機会になりました。
◆青森国スポ試合当日の振り返り
『スクワットでのアクシデント』
そして迎えた国スポ青森。
第一試技はスクワット280kg。
当日のコンディションがかなり良く、設定重量自体も軽めに感じていたこともあり、想像以上の挙上速度が出ました。
しかし、その瞬間、第一肋骨を骨折。
「バキッ」という衝撃的な異音を自分でも感じました。
さらに、深くしゃがんだつもりでしたが、判定は赤判定が一つ。それでも記録としては280kgが残りましたが、ここから先の試技に大きな不安を抱えることになりました。
第二試技は、予定通り15kgアップの295kg。
痛みはありましたが、「ここはとらないと優勝はない」という気持ちでプラットフォームに向かいました。
深さをより強く意識してしゃがみましたが、痛みはかなり強い。それでも何とか立ち上がり、白2本で成功判定。
ところが、その後、陪審員によって判定が覆り、失敗となりました。
得意種目であるスクワットで、まさかの1本のみ。
本来は日本記録にも挑戦する予定でした。それどころか、取ったと思った295kgまで判定が覆って失敗になった。
正直、この時点ではかなり投げやりな気持ちになっていました。
「自分の力を発揮できないまま終わってしまった」という悔しさに加えて、肋骨の痛みも強く、ベンチプレス、デッドリフトもまともにできるイメージが持てませんでした。
『やれることをやる』
そんな状態からもう一度気持ちを切り替えられたのは、普段からメニュー作成をしていただいているコーチのベーコンさん、そしてジムオーナーのグッチさんからの助言があったからです。
「やれるだけのことをやってみよう」
そう気持ちを切り替え、想定していたリカバリーを予定通り行ってベンチプレスのアップに向かいました。
しかし、いざベンチ台に横になってみると……痛い。
シートに仰向けになることも、そこから起き上がることも精一杯でした。
それでもアップを進める中で、自分でラックアップする動作そのものが痛みを生んでいることに気付きました。
そこでラックの高さを一段下げ、人生で初めてセンター補助を入れてもらうことにしました。これが結果的にはうまくハマりました。
135kg、152.5kg、165kg。
3本すべてを取りこぼすことなく成功させることができました。
自己ベストから5kg減ではありますが、この状況で165kgまで持っていけたことには安心しました。
一方で、ベンチプレスについてはかなり良い完成度で試合に臨めていて、目標は175kgに設定していました。そこまで準備してきただけに、悔しさは残りました。
最後はデッドリフト。
フィニッシュのポジションがとにかく痛く、肩が前に出てしまうようなフォームでしか引けない状態でした。
「問題ない、問題ない」と自分に言い聞かせながら、痛みと戦うような試技になりました。
第一試技は予定通り270kgを成功。
そして第二試技、予定していた285kgに挑み、これも成功。
このとき、普段ならイヤホンで音楽を聴きながら自分の世界に入り、試技に集中しているところですが、この日はアップの段階から多くの選手やカメラマンの方と話をしていました。
緊張していたというより、「せっかくここまで来たのだから、最後までやってみよう」という、ある意味開き直った状態だったと思います。
そしてなにより視野が広がっていました。
プラットフォームに入る前に会場全体を見ることができる。観客席を見ることができる。スクリーンに表示されている自分の名前を見ることができる。そして、応援してくれている人たちや、セコンドの眼差しを見ることができる。
その瞬間、「試技をする」ということの見え方が少し変わりました。
ここで、皆さんにも一つ試していただきたいことがあります。
いざ試技をするとなると、緊張や力みからバーだけに集中してしまいがちです。
でも、せっかく自分に与えられた1分間です。
観客席や、スクリーンに映る自分の名前、応援してくれている人たち、セコンドの表情。
そういったものまで含めて、その1分間を存分に味わってみてもいいのではないでしょうか。
怪我をしていて、ベストコンディションではなかったとしても、その日にプラットフォームに立っているのは、日々の生活の中で積み重ねてきたものがあるからです。
だからこそ、自信を持っていい。
せっかくなら、楽しんだほうがいい。
この大会で、そんなことを強く感じました。
『最後の302.5kg』
コーチ、オーナーと一緒に、自分のできることを一つずつやっていった結果、気付けば最後の試技までたどり着いていました。
重量は302.5kg。
これを成功させれば逆転優勝だと聞きました。
今振り返ると、ここで少し気張ってしまったのだと思います。
それまではイヤホンをせず、ただひたすら自分の出番を待っていました。
ところが「302.5kgを引けば逆転優勝」という状況を耳にした瞬間、自分の中に一度は捨てたはずの闘志が燃え上がるのを感じました。
そこでイヤホンを取り出し、音量を上げて最後の試技に臨みました。
結果は、バーは浮かず。
二位が確定しました。
悔しかったです。
ただ、今振り返ってみると、この最後の試技での敗因は、怪我だけではなかったと思っています。それまでの準備期間で、高重量帯を十分に触れていなかったこと。
そして、最後の最後に「これを引けば逆転優勝」という状況になったことで、普段の自分ならしないようなことをしてしまったこと。
それまでイヤホンをせずに臨んでいたのに、最後だけイヤホンをつける。
いつも通りのフォームで引けばいいものを、いつも以上に気持ちを作り、力んでしまう。
結果として、自分本来のフォームではない形になり、バーを浮かせることができませんでした。これも今回の大会から得た、大切な学びの一つです。
『準優勝の先にあるもの』
国スポ青森は、730kgで準優勝という結果に終わりました。
もちろん、優勝を目指していた以上、悔しさはあります。
スクワットでは本来もっと上を狙っていました。ベンチプレスも175kgを目標に準備していました。そしてデッドリフトでは、最後に302.5kgを成功させることで逆転優勝できる場面まで持っていくことができました。
だからこそ、「もっとできた」という思いは残っています。
一方で、第一試技で怪我をしてから、そこで試合を終わらせるのではなく、コーチやオーナーと相談しながら、その時点でできることを探し、最後まで試技を続けることができました。
それは今回の大会で得られた大きな収穫でした。
仕事をしながら競技を続けている以上、自分ではコントロールできないことも少なくありません。睡眠時間や移動時間、仕事による疲労。試合当日のコンディションや、試技中のアクシデント。すべてを理想的な状態にすることはできません。
だからこそ、自分でコントロールできる部分を少しでも増やしていくことが重要だと感じています。
トレーニングをしっかり行うことはもちろん、睡眠、疲労管理、セルフケアなど、日々の積み重ねが最終的なパフォーマンスにつながります。
今回、改めて骨盤職人を使ったセルフケアを取り入れたことで、身体の状態を自分自身で確認し、日常的にケアしていくことの大切さも再認識しました。
「疲れたから誰かに治してもらう」のではなく、まず自分でできることをする。
そのうえで、必要に応じて整体や鍼などの外部からのケアを取り入れる。
これは今後の競技生活でも大切にしていきたいと思っています。
国スポ青森は、730kgで準優勝という結果でした。
しかし、自分にとっては、仕事と競技を両立する難しさ、コンディショニングの重要性、試合中のアクシデントにどう対処するか、そして最後まで自分のできることをやり切ることの大切さを、改めて学ぶことができた大会でした。
この経験を次の大会につなげ、今回届かなかった重量、そしてその先の記録を目指して、また一から積み重ねていきたいと思います。
◆コラム執筆者

石川葵[いしかわ あおい]
山梨県グランディール所属。競技歴5年。
【パワーリフティング(ノーギア)ベスト記録】
スクワット 305kg(一般男子83㎏級日本記録、アジア記録)
ベンチプレス170kg
デッドリフト287.5kg
トータル 762.5kg
【大会成績 83㎏級】
スクワット日本記録、アジア記録保持者
2024年 全日本パワーリフティング選手権(ジュニア)優勝
2024年 アジアパワーリフティング選手権(ジュニア)優勝
2025年 全日本パワーリフティング選手権 2位
(83㎏にて史上初のスクワット300㎏成功)
2025年 アジアパワーリフティング選手権 3位
2026年 全日本パワーリフティング選手権 3位
2026年 世界クラシックパワーリフティング選手権 12位(初出場)




