このエントリーをはてなブックマークに追加

伝統の8×2と高頻度トレーニング、5×5ルーティンの解説

初めまして、パワーリフターの神野と申します。
この度ご縁があってSBD Japanさんの公式サイトでコラムを書かせて頂く事になりました、まだまだ選手として未熟の私ですがパワーリフティングに関するマニアックな情報を読者の皆様に伝えていければと考えています、これからよろしくお願い致します。
初回である今回は最近流行りの高頻度系トレーニングルーティン、その中でも5×5ルーティンについて解説してみようと思います。

【伝統の8×2と海外で主流の高頻度系ルーティンについて】

日本のパワーリフターのトレーニング理論は長年の間8×2(8レップ2セット各種目週1回を基本とした高レップ低セット低頻度のメニュー)というのが主流でした、これは日本のパワーリフティング界がその黎明期に当時世界最強であったアメリカからトレーニング理論を輸入し、その理論がボディビル由来であった事に起因しています。
しかし近年はそのアメリカを含め海外の選手達の間で各種目週1回というのは少なくなっており、もっと高頻度で練習するタイプのトレーニング理論が主流になっているようです、特に最近はインターネットの普及等で手軽に海外選手のトレーニング理論を調べられるようになり、日本でも5×5・ロシアン・スモロフ・531・3×5といった低レップでセット数が多く各種目を週2〜4回といった高頻度で行うタイプのトレーニングルーティンを取り入れる選手が増えています。

高頻度系の理論は国内でもウェイトリフティング出身パワーリフターを中心に古くから行われてきましたが、広く普及し研究されてきた8×2の理論と比べまだまだノウハウが少なく、インターネット等の情報を頼りに手探りで行なっている選手が殆どです。
これからの日本のパワーリフティングのレベルアップには、選手や指導者の間で高頻度系のトレーニング理論が研究され情報が共有されていく事が肝心だと考えられます。

今回は高頻度系のトレーニングルーティンの中でも僕が8×2から移行しやすいと感じ、日本の選手でも実践者の多い5×5ルーティンについて解説します。

【5×5ルーティンとは】

5×5ルーティンは5レップ5セットの練習を重量に変化をつけながら比較的高頻度(各種目週2〜4回程度)で行い、1〜2ヶ月程でピークを作るトレーニング方法で、海外では勿論国内でも最近は一般的に行われているトレーニングプログラムの一つです。

重量設定についてはインターネットで「5×5 Routine Generator」で検索すれば目標重量から毎回のセット重量を算出してくれるHPがいくつもあるので(中身は大体同じ)そちらを利用するのが簡単です。

5×5画像

5×5ルーティンの重量の組み方の一例、この場合は100kg 5回を目標重量とし、徐々に重量を上げながら16回の練習でピークを作ります。
頻度が週2回なら8週間、週3回なら5週間と少し、週4回であれば4週間で終わる計算になります。

【実際に行う上での注意点】

※目標重量の設定について

まず欲張り過ぎない事、これはどのトレーニングプログラムにも言えます、目標重量を欲張り過ぎると中々上手くいきません。
特に5×5ルーティンに慣れてないうちは最終重量をあえて自己ベストより低く設定して余裕を持ってメニューをこなしながら感覚を掴み、ルーティン終了後に自己ベストに挑戦する日を作るようなやり方でもいいと思います。
伸び盛りの若手や増量中でもなければ10kgを超えるような大幅な自己ベスト更新を狙うのは難しいので、一回のルーティンで更新する目標重量はとりあえず5kg程度に設定しておくのが無難ではないでしょうか。

※頻度について

それまでSQ・BP・DLをそれぞれ週1回行っていた選手であれば、いきなり週3回や週4回に増やすのは難しいと思います、まずは各種目週2回程度から無理なく身体を慣らしていくのがいいでしょう、慣れてくれば高頻度でも無理なくこなせるようになると思います。
5×5ルーティンの序盤は非常に軽い重量設定になっている為それ程疲労も溜まりません、なので前半は週3回や4回といったハイペースで回し、終盤の高重量に挑戦する時には週2回や1回まで頻度を落とす方法も有効だと考えられます。
又、ベンチプレス・スクワットと比べデッドリフトは回復に時間がかかる傾向にあるので、ベンチやスクワットは週2〜4回、デッドリフトのみ週1回といったやり方でもよいでしょう。

高頻度系のトレーニングはいきなりハードにやってしまうと回復が追いつかず挫折する可能性も上がります、無理のないペースで続けていくと徐々に身体が慣れて回復力も増し更に高頻度で行なえるようになってきますので少しづつ慣らしていってみて下さい。

※補助トレの量

高頻度の練習を取り入れる場合、1日に1種目だけを行っていると殆ど毎日のようにジムに通わなくてはならなくなりますが、実際週に5回も6回もジムに通える環境にあるという人は少ないと思います。
限られた練習日数で高頻度の練習をやるには必然的に同じ日に複数の種目をやらざるをえなくなってきます、しかし1日に複数種目を行うようなメニューを組んだ場合、沢山の補助トレーニングを行うのは難しくなってきます。
なので5×5ルーティンを行う際はまずメインのルーティンを高頻度で回していく事を重視し、補助トレの種目は重要なものだけに限定するのがよいでしょう、それか無理に補助トレまでやらずメイン種目だけで練習を終えてもよいと思います。
※栄養の摂り方

高頻度の練習を維持する為にはトレーニング前後の糖質やアミノ酸の摂取が重要と感じます、筋肥大よりも疲労の回復を重視した食事やサプリが有効ではないでしょうか。

【筆者が8×2から5×5にした結果】

私の場合スクワットの記録が大幅に伸びました、スクワットに関しては高頻度との相性が良かったようで週1回の時より週2回、週2回よりも週3回4回と練習頻度を増やす度に記録が伸びた感じです。
ベンチプレスについてはあまり効果が出ず同じ高頻度でも毎回しっかり高重量を持つ練習方法の方が調子良かったので5×5はすぐにやめてしまいました。
デッドリフトは8×2の頃から記録に変化はありませんでした。

上記の方法は僕が5×5ルーティンを取り入れてみて感じた事です、やり方に関してはある程度我流の部分があり同じ5×5ルーティンでも実際の進め方は選手によってかなり変わってくると思います。
海外のトレーニングルーティン作成サイトは練習頻度や重量設定が厳しいものが多くそのままでは完遂する事が難しい場合がありますので、頻度や重量や補助種目の量等はそれぞれ自分に合うようアレンジしていくのが良いでしょう。
前述したように5×5ルーティンは他の低レップ高頻度系ルーティンと比べて8×2からの移行が成功しやすいと経験的に感じます。
8×2で練習していた選手がロシアンルーティンやスモロフスクワットプログラム等高頻度系プログラムを導入する場合も、まず前段階としてまず5×5ルーティンを取り入れ身体を低レップ高頻度に順応させながら段階的に移行するという方法も有効ではないでしょうか。

■コラム執筆者

神野亮司

愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )

ベスト記録(ノーギア)
93kg級
スクワット237.5kg
ベンチプレス160kg
デッドリフト262.5kg
トータル660kg
83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg

実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場9回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連する記事